苫屋(民宿)・前編


苫屋

大崎さん:お泊りの場所はどちらなんですか?
Pi-子隊長:野田村の"アジア民族造形館"の近くです。
大崎さん:ほしたら、この道の方が近いですが、雪に加えて山道なので道路状況はよくないかもです。一方のこちらの道は広くてきれいですが、遠回りですね。

地図を広げて丁寧に説明していただいた。

Pi-子隊長:運転手の判断は?
ピッキー:あまりひどい道は避けたいな
るむ:・・・・・・・・・(わたしも運転できるよ)
くりりん:・・・・・・・・・(わたし免許取立てほやほやよ)

大崎さん:でも、まぁ、ひどいといっても普通に舗装されてますし、車が通れないほどではないと思います。山道の方が交通量が少ないので雪は多いでしょうけど、 凍結はどっちもどっちでしょう。
ピッキー:そんなら近い道で行こう。どっちに行ってもスピードは出せないんだし、ならば距離的に近い方がいいかな、と。


そうと決めたら出発だ!
車に乗り込み、カーナビをセット
大崎さん:じゃあ、お気をつけて。
一同:どうもありがとうございました。




予想通り道は凍結していたが、幸い後続車なし、対向車もほとんどなしなのでマイペースで運転。
やはりスタッドレスタイヤをはいていても、ところどころでスリップするが・・・
凍結路面に過信は禁物だ。
とにかく慎重な運転を心がけて進む。

国道45号から野田村の(おそらく)一番の繁華街を抜け、ナビにしたがってひたすら走っていくとどんどん山の中へ入っていく。
当然ながらいっそう雪が深くなり、ナビの画面も寂しくなっていく・・・
普段、比較的人口密度の高いところに住んでいるからかもしれないが、この辺は人も車も少なく、もう深夜かと思うくらい暗く感じる。

カーナビ:ぽ〜ん、目的地付近です。音声案内を終了します。 お疲れさまでした。
ピッキー:「お疲れさま」なんて言われたってまだ着いてないよ。
Pi-子隊長:暗くてよく分からないけど、ここが"アジア民族造形館"だと思うから、まっすぐ行って。
ピッキー:で?
Pi-子隊長:目印は古民家。
ピッキー:古民家に目立つようにネオンサインでもついてりゃ分かりやすいんだが・・・
るむ:そんなんついてたらちょっとイヤなんだけど

まる子:あれかな?
Pi-子隊長:いや〜、ちょっと近代的すぎない

とはいえ、見た感じ昭和中期ぐらいの建物

ピッキー:あった〜! これじゃないか?
数メートル通り過ぎていたので、車をバックさせる。
小さい表札(?)に「苫屋(とまや)」と書いてある。間違いない!(我ながら運転中によく見つけたもんだ)

時間は20:00
大崎さんに「普段(雪がなければ)30〜40分ぐらいで着く」と言われていたので、倍までいかないがそれに近いぐらいの時間がかかったのだな。
ま、時間はともかく、無事に着いたので一安心といったところではある。
ハンドルはきかないし、ブレーキかけても意味ないし、急ブレーキなんてかけようもんならスリップ・・・しただろうな。

周囲が真暗なので、慎重に駐車。
ここで事故でも起こしたら元も子もない。

Pi-子隊長:遅くなってすみません、チームアドベンチャー改めエクスプロレーションです。
坂本さん:ようこそ、お待ちしておりましたよ。

予定よりだいぶ遅くなってしまったにも関わらず、素敵な笑顔とバリトンボイスでお出迎えしてくれた苫屋のご主人、坂本さん。

一同:おじゃましま〜す
中に入ると部屋の中央に大きめの囲炉裏、ほんわりと暖かく、焚かれた火でぼんやりと煙で曇っている。
囲炉裏の上からは大きな鍋が吊り下げられており、まさに日本昔話の世界

それからわずかな暖色の灯り・・・電球もかなりレトロで昭和初期な雰囲気。
なんという幻想的な世界なんだろう。
ピッキー:あれ?電球があるってことは電気はあるぞ。
Pi-子隊長:う〜ん「電気がない」はガセだったんだね。

昔懐かしい囲炉裏
レトロな電球・・・ってことは電気はあるぞ

久美子さん:お疲れでしょう、食事用意できてますよ。

奥から奥さんの久美子さんがご主人と負けないぐらいの笑顔で出迎えてくれた。

坂本さん:うちで作ったどぶろくなんだけど飲んでみる?
まずはウェルカムどぶろくで乾杯。
まる子:おいし〜
くりりん:フルーティーで飲みやすいですね。


串にささってるじゃがいもとおから餅
久美子さん:囲炉裏にささってるじゃがいもとおから餅も食べてみて。

囲炉裏には豪快にまるごとのじゃがいもと(実は何だろうと思っていたのだが)おから餅が串に刺ささって、いい色に焼けている。
まずはじゃがいも一口・・・うん、うまい!表面がカリカリ、中身はほくほく。

まる子:じゃがいもの味付けは何ですか?
久美子さん:皮をむいて、塩を振って焼いただけよ。
まる子:それだけでこんなに甘くなるもんなんですか。
久美子さん:囲炉裏なので遠赤外線効果があるのかしら?あとじゃがいもの本来の甘さだと思うの。
るむ:おから餅もおいしいですよ。でも、お餅というよりパンって感じですね。
久美子さん:おからと小麦粉を混ぜてるからパンっぽいのかもね。

坂本さん:今日はどちらへ行ってきたんですか?
Pi-子隊長:昨日は宮古に泊まったので、朝は浄土ヶ浜から出発して、龍泉洞とその近くにある氷渡(すがわたり)洞っていうところへ行きまして・・・

本日の武勇伝をとくとくと語る隊長

囲炉裏の煙にまかれながら、ゆっくりと時間が過ぎていく。
"苫屋"は約200年前、江戸時代に建てられた建物で、林業を営んでいた方が住んでいたようである。
水周りを中心に修繕、改築はしているが、この居間だけは昔の面影をそのまま残している。

暖房は囲炉裏と蒔きで焚くストーブのみ
現代の住宅で囲炉裏を作って蒔きを燃やせば一酸化炭素が発生し危険だ。(火事などで死亡する原因で最も多いのが一酸化炭素を急激かつ大量に吸い込むためであり、有毒で怖いものである)
でも、苫屋ではおかまいなし。 やはり昔の建物は換気は抜群!隙間風が少々寒いのは確かであるがだ。

くりりん:煙が目に入ってしみる〜。 (ノД`)゚
Pi-子隊長:場所換わろうか?煙が来ない分寒いけど。

「煙が来るけど暖かい」をとるか「煙がこないけど寒い」をとるか・・・ときどき合コンのごとく席を交代しながらの食事であったがこれもまた良し。
これだけ本格的な昔の家に泊まれるというのもなかなかできるものえはない。
ある意味、高級ホテルとは又違う贅沢といえよう。

坂本さん:寒い?じゃあ、もっと火をおこそうか。
エアコンや電気ストーブのようにスイッチ一つで調整できるわけではないが、薪きの位置をちょっと変えてみるだけで、そこに空気が入り火の勢いが強くなる。

久美子さん:すいとんどうぞ。
囲炉裏にくべられた鍋の中身はすいとんであった。
寒い夜には鍋があう。

久美子さん:ご飯もあるけど、後にする?
ピッキー:今いただいていいですか?

ご飯はご主人が作ったという古代米であった。

お米の他、出された食事は全て自家製野菜、もちろん無農薬。
シンプルながら絶妙の味付けだ。
少々の日本酒とともにいただいくのがまたいい。

まる姐さんはいい感じでほろ酔いか・・・と思ったら
まる子:寒いから酔わないもんだね。
ということだった。

ストーブもレトロ
まる子:苦しゅうない ピッキー:はは〜

食事が終わっても坂本さんご夫妻との語らいは続く
お2人は旅先のロンドンの日本料理屋で知り合ったそうだ。
それからバックパックを背負って世界中を旅したが、今度は日本を旅しよう、とキャンピングカーで旅をしていた途中、偶然野田村を訪れ、 かやぶき屋根の古い家を民宿とする計画と管理者を募集していることを知った・・・

Pi-子隊長:で、こちらに落ち着いたんですね
坂本さん:いや、落ち着いたわけじゃなくて、まだ旅の途中だと思ってるよ。とはいえ、初めは「1年ぐらいやってみるか」って思ってて、 もう20年近く経ってるんだけど。
(笑)
久美子さん:私たちも住み始めた頃は分からないことだらけで、ご近所の方々にいろいろ教えられてここまできたのよ。

かなりの常連客、いわゆる「苫屋ファン」も多いらしく、大学の先生、音楽家、外国のセラピスト、ニュージーランドからの留学生、その他にもドイツ、インド、モンゴル、フィリピン ・・・などなど、世界中の人々が岩手の小さな村にやってくるのだとか。

久美子さん:昨日も盛岡からアポなしで来たお客さんがいて、びっくりしたのよ。
坂本さん:大雪で天気も悪かったからね。まさか来るとは思わなかったよ。

ああ、こんなところにも隊長の犠牲者が・・・

まる子:私たちの旅行は天気に恵まれないことが多いんですよ〜
るむ:超強烈な雨女がいまして・・・
Pi-子隊長:何のこと?

すっとぼける隊長は放っておいて、隊長雨女伝説について語る、まるちゃん&るむちゃん

久美子さん:すご〜い、数々の「伝説」があるのね。(笑)
坂本さん:まぁ、雪って不便なことも多いけど、冬の岩手まできて雪が全然ないのも寂しいじゃない。
久美子さん:きっと岩手からの「贈り物」なのよ。・・・ちょっと話が違うんだけど、以前、アイルランドへ行った時、 自転車で転んじゃって大怪我をしたことがあったのね。両腕骨折してたから病院に入院していても何もできないし、落ち込んでいたら 看護婦さんから「これは"アイルランドからの贈り物"なのよ」って言われたの。
Pi-子隊長:贈り物?どうして?
久美子さん:そう思うでしょ。私もそう思って聞いたら「"痛い"とか辛い思いしたことって、ずっと記憶に残るでしょう。 だから、あなたはアイルランドへ来たことを絶対に忘れない」って。
坂本さん:今までのことだって晴れていて順調にいっていたら、こんなに覚えてなかったのかもしれないよ。


ああ、そうか。もしかすると文字通り「天からの贈り物」だったのかもしれないな

Pi-子隊長:みなの者、我に感謝せよ!

とか、のたまう隊長のことは無視!!

話は尽きないが、到着時刻が遅かったので気がつくとああっという間に時間は23:00
全員が入浴を済ませる頃には日付も変わる時間になっていた。

ちなみに風呂も昔ながらの五右衛門風呂か!?
と思って期待していたが、ごく普通の家庭にあるような近代的なものであった。
まぁ、昨日は風呂にゆっくり入れないから、これはこれでよかったのだが。

就寝の部屋は普通の和室で、これまた普通の石油ストーブが置いてあった。
まぁ、普通の旅館と同じである。


ごきぶり体操第一?
インテリアにご夫婦がアジア、アフリカ訪問時に買ってきたと思われる飾り物が置いてあり、なかなか個性的でおもしろい。
廊下にも数点の小物が置いてあり、写真に撮って部屋に戻ると・・・

くりりん:これは"ゴキブリ体操"っていって、寝る前にやると体が温まって寝つきがよくなるんですよ。
るむ:え〜、こう?

なんとくりりんちゃんに倣って女性陣全員が、仰向けに寝て、両手両脚を上に挙げてプルプルと小刻みに震わせる・・・まるでゴキブリ がひっくりかえってピクピクしているような体操を始めていた。

Pi-子隊長:ダイエット効果はあるのかな?
くりりん:う〜ん、どうでしょ?でも真剣にやればあるんじゃないですか?
Pi-子隊長:よ〜し、真剣にやるぞぉ!

これで全員ぐっすりに間違いない。

ピッキー:明日、この辺の夜明けの写真を撮りに行くけど、みんなどうする?起こす?
るむ:起きれたら行こうかな、一応起こして

他、賛同者なし・・・
いいさ一人でいってやるぞ

(ピッキー)

本日のお宿:苫屋
電話、FAX、メール・・・全部ないので往復はがきで申し込んでください。
〒028-8201 野田村大字野田5-22 苫屋・坂本様 宛て
問合せは野田村農林商工課(TEL 0194-78-2111)まで