門馬(メンマ)さん:どこからバスが発車するか分かる?
Pi-子:切符買う時に調べておいたもん。ここだよ!
自慢げに答える。
今日は開封へ行く為、バスターミナルまでやって来たのです。
発車の数分前になってバスが開くとみんないっせいに乗降口へ押しかける。
Pi-子:座席が決まってるんだから、ゆっくり行ったっていいのにね。
門馬さん:荷物が多い人が多いから早く乗ってスペースを確保しようとするんだよ。
確かに呼和浩特へ行った時も思ったけど、中国人って荷物がすごく多いんだよね。
Pi-子:預けちゃえばいいのに。
バスの下(日本の夜行バスなんかと同様)、もしくは上(屋根)に荷物を置くスペースもあり、どうしてそこに預けないのか不思議?
門馬さん:車内に持ち込めないような大荷物はそうだけど、置き引きも多いし、できるだけ自分の身辺に置きたいんだよ。
そうなんだ。みんなたいへんだね。
乗降口ラッシュがひと段落してからバスへ乗り込むが、すでに通路まで荷物でびっしりになっていて、座席まで行くのに一苦労。
なるほど、こうゆうことなのか。
門馬さん:このバスは長距離というよりも中距離なのでまだいい方だよ。
・・・そうなんだ。(^_^;
まぁ、でも、バスに乗れたら安心しちゃったな。
ふと眠気がPi-子を襲う。
門馬さん:このバスは開封が終点じゃないから、運転手に前もって言っておくか、「下ります」って言わないと止まってくれないんだよ。聞いてる?
Pi-子:う・・・ん・・・ZZZ
( ̄q ̄)ZZZ・・・寝ている間にバスは開封へ
門馬さん:もう開封市内に入ったよ。どうするの?
この一言で目が覚める。
またまたそんな事を言って、人を起こそうと思ってるんでしょ!?
Pi-子:ウソだぁ。
門馬さん:本当だって!!
乗客のおばちゃん:開封でしょう、止めて!!
おばちゃんの一言でバスは急停止、私たちもおばちゃんと一緒に下車したのでありました。
門馬さん:ほらね。
Pi-子:本当だったんだ。・・・ま、そんなこともあるって。
そんなことしかないような気もするけど、ま、いいってことで(!?)
ここからは徒歩で河南大学へ。
門馬さん:・・・さっきからずんずん歩いてるけど、こっちの方向でいいの?
Pi-子:・・・たぶん、こっちだと思う・・・地図持ってるもん。
門馬さん:誰かに聞いてみた方がいいんじゃないの?
Pi-子:ちょうど今、そう思っていたところだよ!!(←全然思ってなかった)
通りすがりのおばちゃんに道を訊くと・・・全然反対方向じゃなかったけど、ちょっと違う方向に向かって歩いていたようで・・・
Pi-子:・・・ま、そんなこともあるってことで。
そんなことしかないような気もするけど、無事に河南大学へ到着。
根岸さん:あっ!!
最初に遭遇した根岸さん。
彼女とは同じ歳だったこともあり、列車の中で一緒に(留学先の大学に来るまで)おしゃべりしてたんだよね。
Pi-子:根岸さん、久しぶり〜。覚えてる?
根岸さん:うん、久しぶりだね〜。あっ、こちらの方は?
Pi-子:老同学(先輩)の門馬さん。鄭州大学に去年から1年前から留学してるの。
門馬さん:あ、どうも。
Pi-子:私が中国の友達と一緒に来たと思ったんでしょ?
根岸さん:ううん、中国人に連れられてきたのだと思った。
そうだよな〜、門馬さん、全然日本人には見えないもんな。
1年以上いるとこうなるんだろうか・・・。
根岸さん:開封へ来るのは初めて?案内するよ。
この日、1日は河南大学の留学生団の根岸さん、団長の平山さん、内田さんたちと一緒に開封の街中を回る。
開封は河南省の省都である鄭州に比べると小さな街だけど、歴史が古く、なんでも西安、洛陽に続いて「中国三大古都」として数えられているらしい。
紀元前364年魏の首都となり、その後いくつかの王朝の都となる。
最も栄えたのは、北宋時代(960-1126年)時代。
西にある西安、洛陽と上海までを結ぶ途中にある為裕福な街で、北宋時代には人口が約百万人を超えていたという。
その名も「東京(とうけい)」といって繁栄を遂げた。
現在よりもかなり大きな町だったんですね。
しかし、金時代には北京に遷都。
その後も河南の中心地であったけれど、中華人民共和国誕生後は省都が鄭州になり"中心地"という座を奪われた・・・というところだろうか。
平山さん:鄭州には買い物なんかでちょこちょこ行くよ。
内田さん:旅行へ行く時も一回鄭州へ出るわね。上海まではいいけど、北京へ行く時なんかは不便なのよね。
今まで河南大学の留学生が度々鄭州大学へ来ていたのはそうゆうことだったのか。
まずは宋代街へ。
Pi-子:わぁ
この一角は150mに渡って宋代の街並みが再現されている。
街を歩く人達の服装を当時のものにしたら"日○江戸村"の中国版!?
(今ではさらに延長されて400mほどになったらしい)
平山さん:本当の宋代の街並みはちょうどこの下に埋もれていて掘れば発掘されてる、なんて言われてるんだよ。
根岸さん:度重なる黄河の氾濫なんかで沈んだとか言われてるみたい。
内田さん:実際は戦争で焼けてしまったのかもしれないけど、分からないうちが一番楽しいのかもね。
歴史ロマンってヤツですね。
 宋代の街並み |
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| 復元された龍亭 |
通り真っ直ぐ歩いて行って龍亭公園に到着。
ここは代々の王朝の王宮があったところで、1000年以上もの歴史があるんだとか。
もしかしたら、これも掘れば見つかるのかもしれない。
入り口から両側に2つの人造湖があり、その先に龍亭(清時代に建てられた宮殿を復元したもの)がある。
2つの人造湖は京劇"楊家将演義(ようかしょうえんぎ)"で有名な北宋時代の将軍・楊業と悪役の藩仁美から名付けられており、西側が楊家湖は透明感のある美しい湖で、
東側が藩家湖は濁っているとのこと。
・・・あんまり違いがよく分からなかったけど。
復元された龍亭は高さ13m、72段の階段の上に建てられているので湖と開封の街の眺めがなかなかGOODでした。(^_^)o
その後は相国寺(開封で一番古いお寺。555年に建てられた)へ。
夜は夜市を案内していただき、宿舎でプチ宴会でした。
翌朝
トントン(ノックする音)
Pi-子:門馬さん、起きてる?
門馬さん:起きてるよ。
Pi-子:今日はどうするの?何時ぐらいに帰る?
門馬さん:あ、オレ用事あるから昼頃に帰るよ。
Pi-子:え〜っ、もう帰っちゃうの?私はもう少し遊んでいくよ。
門馬さん:じゃあ、鄭州大学のみんなにお土産買っておいて。迷惑かけたでしょ。
はぁ、ごもっともで。
門馬さん:あと河南大学の皆さんにも世話になったからね、何か買って渡しておきな。それから帰る時に送ってくれようとするんだけど、
それは断るんだよ。それから・・・(くどくど言うので以下略)
Pi-子:はいはい、分かりました。さようなら!!
こうして門馬さんは先に鄭州へ帰っていった。
内田さん:午後はどうするの?私はちょっと用事があるんだけど、自転車は使わないから貸すわよ。
Pi-子:歩いてぶらぶらしようと思ったけど、自転車があると助かるのでお言葉に甘えます。

包公の裁きを再現した人形 |
思いっきりお言葉に甘え、自転車を借りて包公祠へ。
包公祠は宋代の著名な役人・包拯(ほうじょう)を祭った祠で、この人は中国じゃ超有名人らしい。
その人気の秘密は1970年代に放送された「包青天(パオチンティエン)」TVドラマ。
内容は権力の横暴に苦しむ民を助け、大臣・王族であろうとも屈することなく正義の裁きを行う、といった「大岡越前」と「遠山の金さん」のようなものみたいです。
その後、1990年代にも再びドラマ化され、トータル500話を超える超お茶の間ロングラン作品に。
包公を助ける助さん・格さんのような登場人物もいるそうので、中国の「水戸黄門」とも言えるかも。
祠の中に入ると包公にまつわる名場面がハリボテ人形で再現されている。
う〜ん、包公、昔のマイケル・ジャクソンみたいに色黒です。(←これは現在のPi-子の発言です)
それから鄭州のみんなのお土産にと、開封名物でもある刺繍工場なんか行ってみるが日曜日だったのでクローズ。
昨日も訪れた開封の繁華街へ行き、鄭州大学と河南大学の皆さんへのお土産を調達!
疲れていたし、一仕事(?)終えた安堵感からかぼ〜っと歩いていた時であった。
怪しい男が私のカバンに手をつっこんでるではないですか!?
Pi-子:何すんだよ!!!!!
あわてて男の手を払いのけ、カバンを抱える。
男は悪びれる様子もなく、にやにやして早足で去っていった。
ああ、びっくりした・・・( ̄Д ̄;)
Pi-子:いいんですよ、見送りなんて。本当に大丈夫ですから。
夕方、内田さんに自転車を返し、お礼に買ったお土産を渡して帰ろうとすると内田さんは送ってくれると申し出てくれた。
なんか門馬さんに言われた通りの展開なので、断ろうとしたが「ちょっとそこまで」と言っているうちに長距離バスターミナルまで着いてしまった。
内田さん:いいのよ、門馬さんに頼まれちゃったし。
あの、小姑め・・・
内田さん:ここよ、バスターミナル。
中へ入って切符を買おうとするが、窓口のお姉ちゃん(服務員)たちはおしゃべりに夢中。
Pi-子:労駕〜!!(すみませ〜ん)
服務員:何?何か用?
客に対してこの態度は・・・と、以前の私だったら怒ったかもしれないけど、もはやこの頃になってくるとマヒしてきて、何も感じなくなってました。
Pi-子:すみません、次のバスの鄭州まで1枚欲しいんですけど・・・
服務員:没有!!(きっぱり!)
え・・・没有(ないの)?
ぼうぜんとしていると内田さんが私の手をひっぱって駅まで連れてきてくれた。
内田さん:これ、次の列車の番号と時間と全部書いておいたわ。
Pi-子:あ、すみません。
内田さんから手渡されたメモを持って窓口を並ぶ・・・というか、まわりに合わせて割り込んでいく。
Pi-子:鄭州まで1枚・・・このメモを見て。
駅の服務員:あんた、どこの人?
Pi-子:留学生。
駅の服務員:じゃあ、学生証見せて。
そうだ、列車の切符を買うときは学生証の提示を求められるんだ。(中国人は身分証が必要)
学生証があると割引にもなるし・・・えっと、どこにしまったっけ?
実はさっきスリに遭いそうになった時、厳重に中にしまったので、なかなか出てこない。
その間、後ろの人がどんどん割り込んでくる。
内田さん:はい、これ、私の学生証使って。
Pi-子:あ・・・すみません。(重ね重ね)
浩子:・・・で?
Pi-子:内田さんに学生証借りて切符買って、その後で偶然に内田さんの友達に会って、列車の中ではその人と一緒に帰ってきたってわけで・・・
"独立した旅"というよりは"皆さんのお世話になった旅"になってしまったわけだけど
浩子:でも、どう?旅行に行く前に比べて、心理的には。
Pi-子:ん・・・なんだか、スッキリした感じ。
浩子:じゃあ、もう大丈夫だね?
Pi-子:そうだね、没問題(問題なし)ってとこかな。
結果的には単なる"気晴らし"だった気もするけど・・・スッキリしたから、まぁ、いいか。
* 老(現在の)Pi-子より補足 *
振り返ってみると、この辺から"イヤな事があると旅に出る"というクセがついたようです。
もっともイヤな事がなくても旅にでてますけど。(^_^;
当時に比べれば、まだマシな旅行ができるようになったとは思いますが、思い込みで突き進むところは変ってないんだなぁ、と自分でも呆れるばかりです。
それにしても、鄭州大学&河南大学の留学生の皆さんにはたいへんご迷惑をかけました。
時を越えて陳謝 m(_ _)m
(Pi-子)