ゴハン食ベマシタカ?



老王(横笛)とおねえたま(二胡)の共演


王老師:今日は手紙の書き方を勉強しましょう。みんな中国語で手紙を書いたことはある?
最近ようやく身の回りのことが分かるようになってきたばかりだというのに中国語で手紙などまだまだ・・・

王老師:何も難しい決まりはないけれど、手紙を書く時に困らないように簡単に説明をしましょう。


  @ 相手の名前

     男性なら ○○先生、女性なら ○○女史(独身の若い女性の場合は小姐
     親しい間柄ですこし年上の人なら 小○○
     親しい間柄でだいぶ年上の人なら 老○○


  A 書き出し

     好、 こんにちは、(ていねいに)こんにちは
     最近様? 最近どうですか?
     身体好 お元気ですか?


    B 本文 ←改行した時など行の初めは先頭を2文字ぐらい下げる



  C結びの言葉
                     祝
 ←真ん中に/相手の幸福や健康を祈るという意味

             身体健康、万事如意!(お元気ですべてがうまくいきますように)
             生活愉快、工作順調!(楽しい生活が送れますよう、仕事が順調にいきますように)
               ↑真ん中よりやや左側に/励まし、敬意を表する言葉で締めくくる


                                                     D署名

    署名と日付は左側→                                     E日付
                                           

王老師:これは一例であって、必ずこうでなければならないということはないです。友達だったらもっと自由に書いてもいいですよ。 ・・・アメリカや日本ではどう?決まり文句みたいなものはある?
ジェイソン:似たようなもので、特に決まりはないですね。
Pi-子:日本では正式な文章だと書き出しに季節の挨拶を書いたりしますよ。

王老師:季節の挨拶?どんな感じで?
Pi-子:ん〜、例えば「暑くなってきました」とか「最近は寒いです」とか・・・

"時候のあいさつ"のことを言いたいのだが、語学力(中国語)の問題でこの程度の説明しか言えないのがもどかしい。

ジェイソン:それにどんな意味があるのさ?
Pi-子:意味?え〜、習慣?なんだろ〜、マナー・・・かな?

説明できないのは語学力の問題ではなかったようだ。
これ以上説明ができないので(日本語で言えと言われても分からない)ふと目があった団長に「助けて」という視線を送る。

団長:う〜ん・・・日本には昔から「四季を楽しむ」という習慣もあって手紙にも季節感を出したり、冒頭から用件に入ってしまう前にちょっと前置き したり・・・ってことだと思うんだけどな。
ジェイソン:前置きだったら「やぁ、元気?」で十分じゃないのか?わざわざ天気や気候のことなんか書かなくても。
王老師:そうね、天気や季節の挨拶をする理由はよく分からないけど、日本人は礼儀正しいからかしらね。

"日本人は礼儀正しい" とか言われると礼儀正しくない日本人としては耳が痛いのですが・・・(^_^;A

ま、でもこれってやっぱり文化の差なのかな?それとも気候の差?
アメリカも中国も日本のような"春"とか"秋"って明確なものがあまりなくて暑さと寒さが日替わりで極端だし。

こんなことを考えながら、午前の授業は終了。
お昼休みで一旦宿舎に帰ったのだった。

Pi-子:回来了〜(ただいま〜)
老王:回来了〜(おかえり〜)
守衛のおじいさん、「王さん」が応えてくれた。
おじいさんだから"老"をつけているわけではなく、上の手紙の説明でも書いた通り"親しい間柄でだいぶ年上"なので"老王(ラオワン)"と呼んでるのです。

老王:Pi-子、ゴハン食ベマシタカ?
老王に日本語で質問される。
年齢を考えると日本語教育を受けていたのではないかと思われますが、老王は日本語だけではなく、英語と他の言語も話す"5ヶ国語を話す門番"でした。

でも何で「ご飯食べたか?」なんて聞くんだろ?
もしかして「食べてない」って言ったらなんかおごってくれるの?
Pi-子:いいえ、まだです!
期待をこめて答えるが・・・

老王:ソーデスカ。
と言うと、守衛室へ戻ってしまった。

ご飯・・・おごってくれるわけじゃなかったのね?(ちょっとがっかり)



旬(ジュン)ちゃん:それは中国人のあいさつだよ。
昼食後、部屋に戻ってきてルームメイトの旬ちゃんにさっきの老王との会話について話していた。

Pi-子:あいさつ?
旬ちゃん:中国人同士では「ニーハオ」なんて挨拶はしないんだよ。「吃飯了没有?(ご飯食べましたか?)」ってのが挨拶が一番メジャーなんだって。
Pi-子:食事を挨拶にするのが中国人らしいね。

やっぱり老王はご飯をご馳走してくれるわけじゃなかったのね。

旬ちゃん:さ〜、午後の授業までまだ時間があるから、昼寝しようかな〜
Pi-子:あと1時間ぐらいあるね。天気がいいから私は洗濯しようかな。

中国の多くの企業や学校では1時間半〜2時間ぐらいの長めの昼休みがあるのです。
休み時間は時間をかけて食事したり、運動したり、それぞれ好きなことをして過ごしてますが、一般的には昼食後、昼寝します。
もっとも旬ちゃんの場合、昼寝=趣味だけどさ。

私は洗濯物を持って宿舎の建物の前にある洗濯機が置いてある洗濯棟へ。
洗濯機は5台あったけど、常に2〜3台は壊れており土日になると競争率があがるので、天気がいいお昼休みはけっこうチャンス(!?)

さすがにこの晴天、壊れていない洗濯機3台中2台が使用中だったけど、1台が残っていたので洗濯開始。
洗濯機は2層式だったので途中で洗濯物を脱水層に移さなければいけない。
部屋に戻るとこれがめんどくさくなるので、洗濯機置き場の前で本を読み始めた。

小楊:あら、お洗濯できた?
声をかけてきたのは宿舎の周りのお掃除なんかをしてくれてる"服務員"のおばちゃん小楊だった。
("小楊"という名前ではなく、"楊さん"。この人は老王よりだいぶ若かったけど、私より年上だったので"小楊"と呼んでます。)

Pi-子:いや、まだ途中。
なんて会話をして、小楊は去って行った。
・・・でもなんで小楊「洗濯できた?」なんて聞いたんだろ?

あ、もしかして小楊も洗濯機使いたかったとか?

そう思った私は脱水の回数も減らして、大急ぎで洗濯を終えると小楊のところまで行くと
Pi-子:小楊、洗濯終わったよ!!
小楊:そう、今日はお天気がいいからすぐに乾くわよ。


急いで報告したにも関わらず、小楊は洗濯する気配を全く見せず・・・

賢明な読者の皆さんはお気づきかもしれませんが、これも中国人の挨拶だったのです。
洗濯をしている人には「洗好了?(洗濯できた?)」
どこかへ向かっている人には「出去?(お出かけですか?)」
などなど、その状況に合わせて挨拶をするのです。

日本人なら「今日はいいお天気ですね」といったところでしょうか?
・・・やっぱり日本人は天気、気候のあいさつが一般的ですよね。(手紙同様)
相手の行動をストレートに挨拶に使う中国人と天気・気候など当たり障りのないことを挨拶に使う日本人・・・文化の差っていうか、国民性なんでしょうか?

(補足)
中国人の挨拶ですが、昔は「吃飯了?(ご飯食べましたか?)」が主流でしたが、経済発展の目覚しい昨今では新しい挨拶言葉もどんどん増えていて、例えば
「最近発了?(近頃、儲かりましたか?)」とか
若い人の間では
「今天博客了?(今日ブログ書いた?)」なんてのも使われているらしいです。

言葉ってその時の社会情勢で変化するから面白いですよね。

(Pi-子)