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漢字の本当のすがた  それは絵です






な ぜ 辞 典 で は 意 味 が わ か ら な い の か


  
羊(ヒツジ)が言うとなぜくわしいの?  言+(?)=詳

 ここで「詳」の字を例にあげてみますと、辞典ではつぎのような意味がならべて書いてあります。
    くわしい  つまびらかにする ことごとく  よい
    報告    いつわる     よそおう   心をくばる

 では、これを読んだ人は「詳」の字がわかるでしょうか?
 残念ながら、これらの意味をすべて暗記してみても、この字がわかったことにはならないのです。なぜならこれらは、いろいろな時代や地域で生じた意味を集めたものであって、文字そのものの説明ではないからです。
  
 漢字は、もとの絵をつかんだときわかります。ゴンベンはナイフと口を描いた絵で、口でスパッと言い切ることです。「いう」の意味だ、くらいは学校でも教えてくれます。ではここになぜヒツジがいるのでしょうか?
 ヒツジは日本ではおとなしく、かわいいものというイメージがありますが、古代人はヒツジが緑の草原の中でも白くて見えやすいので「よく見える」という特徴を考えました。
 この「見えやすい」という意味がわかると、つぎ
のように羊を含んだ字がまとめてわかってくるのです。

 
羊+大=美(大きく目立つ)   示(祭壇)+羊=祥(見えない力があらわれる)
 羊+食=養(きちんと食べさせる)言+羊=詳(わかりやすく言う)
 水+羊=洋(遠くまで見える海) 魚+羊=鮮(はっきりした色の魚)
 羊+羽=翔(派手に飛ぶ)   
 
君(まとまる)+羊=群(まとまって見やすい)

 このように漢字はもともと絵の組み合わせですから、どんな絵を、どんな意味で組み合わせたのかを見れば、その漢字の本来の意味がつかめます。
 ただ辞典というのは、あくまで知らない字とか熟語にぶつかったときに調べるための実用書ですので、たくさんの意味や熟語が文章でならべられているだけです。辞典は専門の文献学者の精密な研究によって作られていますから、もちろん内容は絶対に信頼していいものです。
 ただし漢字のもとの姿、成り立ちというのものをイメージでつかむ、ということになりますと、残念ながら辞典はそのようには作られていないの
です。

     
漢字は学問にしたとたんにつまらなくなる

 私たちは漢字=国語、漢字=学問、というふうに思い、人に教えてもらうものだと、受け身でばかり考えてきました。
 でも私たちは漢字を書いているつもりで、じつは絵を描いているのです。絵というのはもともと、リクツぬきに一発で人にイメージを伝えるもので、だれも
がふだん気楽にかくものであり、学問でも何でもありません。
 漢字を絵だと思ってみれば、そこには
古代の人たちの面白い発想、私たちの忘れている古代のいろいろな知恵がかくされています。漢字は、はてしなく大きく、面白いロマンの世界なのです。
 漢字の成り立ちの研究は、はじまって1世紀もたっていない分野で、まだ成り立ちのわからない字は山ほどあります。それらはこれからも多くの人によって解き明かされていかなければなりません。それには、漢字は絵なのだ、と見方をきりかえることがスタートになります。


 

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