GEORGES PACZYNSKI
非常に良い音だ
単に、物理的に音が良いというのではなくて、感覚的にも優れている
"GENERATIONS"
RENAUD PALISSEAUX(p), LAURENT FRADELIZI(b), GEORGES PACZYNSKI(ds)
2006年2月 スタジオ録音 (ARTS & SPECTACLES : ASCD060401)

今、話題のドラマー、GEORGES PACZYNSKIの2006年録音の最新アルバム。なかなか入手困難のようで、暫く待った。最近は幻の名盤発掘とか言って、稀少盤が次々と世に生み出されていく。これはジャズファンとしては有難いことだけど、稀少であることを宣伝文句に需要を煽るようなことは程々にして欲しいという感じを持っている。僕の経験則でいうと「幻の名盤に名盤なし」ということが多かった。
PACZYNSKIのアルバムでは澤野工房から発売になった"8 YEARS OLD"が結構話題になったようだが、生憎、僕は持っていない。1994年に録音された"LEVIN' SONG"が当時、800枚しかプレスされなかったということだが、「名盤復刻」ということで最近、再発になった。

@"EMMI" 
先ず、それぞれの楽器の音がいい!ピアノの一音一音はクリアーで珠を転がしたようなであるし、ベースは箱が共鳴しているし、ドラムスはシンバリングが繊細ないい音をしている。これは特筆に価すると思う。非常に繊細な演奏が続くが、半ばにして、4ビートを刻み出す。繊細である一方で迫力不足の感も拭えない。
A"ALMA MIA" 
ドラムスのソロで始まる。その後、3人が合流しテーマを奏でるが、アドリブに入るとPACZYNSKIの独壇場だ。マレットを使用して長めのソロを展開していく。ピアノのPALISSEAUXが多少遠慮がちなの残念。ここはベテラン勢を向こうに回して大いに爆発して欲しいところだ。
B"FREE FOR THREE" 
タイトルの如き、3者のフリー演奏だが緊張感溢れるプレイが聴ける。ここでも各楽器から流れ出てくる「音」がいい。
C
"PART ONE FANTIN'S SONG" ベース・ソロ。アコースティックな箱鳴りが堪能できる。 FRADELIZIはなかなかのテクニシャンだ。3分と22秒。
D"MISS L." 
トリオによるワルツ。PACZYNSKIのブラッシュ・ワークが凄い。願わくば、ピアノがもうひとつ燃え盛って欲しいと思う。

E
"PART TWO FOR HELENA" PACZYNSKIのドラム・ソロ。これが全て一人でたたき出したドラムスの音かと疑うほどの多彩さを見せ付ける。特に、シンバルワークが印象的だ。少々長めの6分と27秒。
F"PATCHWORK" 
PACZYNSKIのオリジナル・ブルース。分かり易いベースのウォーキングが1コーラスあって、テーマに入る。ベース・ラインとは対照的に抽象画のようなテーマが面白い。しかし、このベースのウォーキングは太く箱鳴りしていていいねえ!寄り添うシンバルの音色がぴったり!後半部では噛み合っていなそうで噛み合っているリズムチェンジが面白い。ベースがどんなに暴れようとタイムキープを外さないシンバリングは流石だ。
G"L'ETANG DES PERCHES" 
しっとりとしたバラード。
H
"PART THREE FOR ISA" 今度はピアノ・ソロ。これで3人全員が1曲ずつ(CEH)ソロを演ったことになった。

プレイヤー、各人のソロ・チューンを挿入した点でこのアルバムには実験的、あるいは、能力披瀝的な意味があったのであろうか?どうもそういう部分が強すぎて、僕としてはすっきりしないのだ。3人がひとつの目的(アルバム制作)に向かって挑んだという印象が少ないのだ。実験的、試験的な印象を受けてしまう。
アルバム・タイトルの"GENERATIONS"にはそれぞれの3つの世代が集まったという意味合いがあるのかも知れない。多分、ピアノのRENAUD PALISSEAUXが一番の若手なのだと推測する。演奏に遠慮が見られるもの。ここを遠慮せずに「ガツン」と演っていればもっと素晴らしいアルバムになったに違いない。
一方、音に関して言うと非常に良い音だ。これは単に、物理的に音が良いというだけでなく、感覚的にも優れていると思う。   (2007.09.08)



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独断的JAZZ批評 435.