独断的JAZZ批評 814.

HAKUEI KIM (TRISONIQUE)
少々、奇を衒ったか、実験的であり過ぎたか?!
"A BORDERLESS HOUR"
HAKUEI KIM(p, Neovichord, effects), 杉本 智和(el-b, db, ribbon controller, electronics), 大槻"KALTA"英宣(ds, per, el-per, looper, udu)
2013年2月 スタジオ録音 (UNIVERSAL : UCCJ-2113)

HAKUEI KIMのアルバム紹介は3枚目だ。1枚目が2006年録音の"HOME BEYOND THE CLOUD"(JAZZ批評 375.)で、オーストラリア留学時代の旧友との顔合わせとなっている。2枚目が2010年録音の"TRISONIQUE"(JAZZ批評 677.)で、今回と同じメンバーを揃え、全編に漲る躍動感と緊密感が素晴らしかった。
今回の本アルバムはそれに続く同じメンバーのアルバムということで期待感が大いに高まった・・・。蓋を開けて見るまでは!
アルバムのメンバー紹介のところで書いているが、今回はアコースティックなピアノ・トリオではなくて、聞いたこともないようなエレクトロニクス・ツールを多用しており、多分、オーバーダビングも施されているのだろう。


@"INTRO" パーカッションを中心としたメロディのないイントロ。
A"JACKIE ON THE RUN" 
おっと!エレキベースだ!ピアノのほかにもメロディ楽器がある。多重録音しているのだろう。
B"PARALLEL BLUES" 
グニャグニャペコペコとしたエレキベースのソロが心地よくない。まさか、こういう演奏が含まれているとは夢にも思わなかった。
C"A CLOCKWORK ROCK" 
これも電子楽器を駆使した演奏。もう沢山だ!
D"A REQUIEM" 
タイトル通り、幻想的な重厚感のある美しいバラード。しかも、アコースティック。後半部の大槻のドラミングが効果的。
E"THE GATEWAY" 
杉本はエレベを駆使している。テーマも含めて無機質な演奏で面白くない。
F"MESOPOTAMIA" 
もしかして、ここでNeovichord(打弦鍵盤楽器)を使用しているのかも知れない。リズムとパーカッションばかりが強調されたトラック。
G"ANTIKYTHERA MECHANIZM" 
幻想的な電子音楽からアコースティックな演奏にシフト。
H"ON THE HORIZON" 
本アルバムは全てHAKUEIのオリジナルだが、なかなかのメロディ・メーカーでもある。美しいバラードだ。このトラックを聴いて少し救われた気分になった。
I"MONOLITH" 
効果音を多用している。

多分、HAKUEI KIMは、一度は気の合った仲間とこういう音楽をやってみたいと思ったのだろう。エレクトロニクス・ツールを多用し、今までにない姿を垣間見せることは出来た。ただ、やりたい音楽をやり尽したということと、リスナーがいいなと思うかは別問題で、大いに疑問の残るところだ。
少々、奇を衒ったか、実験的であり過ぎたか?!
僕としては前作のような素晴らしいピアノ・トリオを聴いた後だけに、正直、ガッカリした。ただ、これも成長のための糧の一つと思えば、これからの活躍が期待できるだろう。
初めて、HAKUEI KIMを聴くなら、前作の"TRISONIQUE"(JAZZ批評 677.)をお勧めしたい。   (2013.07.18)

参考サイト : http://www.youtube.com/watch?v=0YxPriIFtR0



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