独断的JAZZ批評 785.

KEISHI MATSUMOTO
第1弾からの明らかな成長ぶりを見せてくれたことは嬉しいことだ
"LIFE ABOVE DEE"
松本圭使(p), 小牧良平(b), 福森康(ds)
2012年1月 スタジオ録音 (A PATH IN THE MUSIC : KM-121108)


松本圭使のリーダー・アルバム第2弾。
第1弾の"THE OTHER SIDE OF IT"(JAZZ批評 631.)は2009年の録音で、アドリブのセンスの良さと作曲の才能を見せつけてくれた。当時はまだ26歳という若さで、これからの躍進を大いに期待させてくれたものだ。
今回はベースが小牧良平に変わっている。この3人、みんな鹿児島県の出身だ。松本自身もほとんど九州から出ることが少なくて、もっぱら鹿児島を拠点として活動している。その松本が数少ない東京遠征に来たのが2011年の11月。池袋のAPPLE JUMPで生を聴くことが出来た。
その時も期待に違わぬ演奏で、これからも注目していこうと思った。
スタンダードが3曲、MILESのカバー曲が1曲。浜崎航の曲が1曲。ベースの小牧が1曲提供して、残りの5曲が松本のオリジナル。今回のオリジナルもなかなか良いし、スタンダードの選曲もいいね。

@"SPEAK LOW" このタイトルを見ると条件反射的にWALTER BISHOP JR.の同名アルバム(JAZZ批評 111.)を思い出してしまう。BISHOPほど泥臭くはなくて、洗練されている。
A"PAZZLE RING" 
やはり九州出身のテナーサックス奏者、浜崎航の書いた曲。小牧のベース・ソロがグルーヴィ。こういうベーシストって好きだな。
B"DEDUCATION" 
ビートの強い小牧のベースがいいね。こういう静かな曲でも強いビートで弾いてくれると沸き立つものがある。
C"INTERLUDE 1" 
ソロ・ピアノによる2分強の間奏曲。
D"BLUE IN GREEN" 
MILES DAVISの曲とも、BILL EVANSの曲とも言われている。ここでは福森のドラミングがユニークで面白い。静謐なバラードから徐々に高揚感を増していくそのさまがいいね。最後はリフにのってドラムスがソロを執る。
E"DEEPTHINK" 
丁度良いバランスで高速4ビートが入った。松本の流れるようなパッセージに狂いはないし、3者の一体感が素晴らしい。この曲は良いアクセントになった。
F"LIKE SOMEONE IN LOVE" 
ピアノ・ソロ。テーマにおけるピアノのキレがいいね。この躍動感、堪らんわ。アドリブでの左手のベース・ラインが効いている。
G"INTERLUDE 2" 
約50秒の間奏曲。
H"D" 
硬質な小牧のベースがこのグループに逞しさを与えている。3人の絶妙なインタープレイも聴きものだ。
I"HOSHIAKARI" 
小牧の曲。
J"SOMEONE TO WATCH OVER ME"
 これもピアノ・ソロ。G. GERSHWINの曲。それにしても良い曲だなあ。この曲の名演っていくらでもあるだろうけど、松本が奏でるこのソロ・ピアノも絶品で、じんわりと心に沁みる。音数が多くもなく、少なくもなく、きちんと「間」を持っているのがいいね。いいピアニストってみんなこの「間」を持っているんだよね。

第1弾のトリオに比べると、ベースが小牧に代わってグループに力強さが加わり、ドラムスもピアノもその影響を受けたという感じ。加えて、アンサンブルも素晴らしい。第1弾からの明らかな成長ぶりを見せてくれたことは嬉しいことだ。
当面はこの鹿児島トリオで更なる飛躍を目指してほしいと思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.12.26)

参考サイト : http://www.keishimatsumoto.com/



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