独断的JAZZ批評 769.

ROMAN TULEI
画一的、相似形のテーマ、アドリブにお腹一杯
"INSPIRATION"
ROMAN TULEI(p), LORENZ BEYELER(b), TOBIAS FRIEDLI(ds)
2011年7月 スタジオ録音 (UNIT RECORDS : UTR 4341)


モルドヴァという東ヨーロッパの出身でスイスのジャズ・シーンで活躍するピアニスト・ROMAN TULEIのアルバム。東ヨーロッパのジャズというとクラッシクの薫陶を受けて美旋律でクールな演奏を連想してしまう。ポーランドとかチェコ、オーストリアのグループって多かれ少なかれそういう印象が強い。僕の中ではそういうイメージがかなり固定していて、誰か、そのイメージを壊してくれるようなグループが現れないかと期待していたところだ。
このROMAN TULEIは1978年生まれというから、現在、34歳という若さだ。残る二人のサポート陣も写真で見る限り似たような年齢ではないだろうか?
正直に言って、最近のヨーロッパ・ジャズは少々食傷気味だった。特に若手の演奏に似たようなものが多くて、個性的で生き生きとしてピチピチ飛び跳ねるような演奏が少ないのも不満点だった。

@"CITY OF SEARCHES" テーマが凝っていて、少々仰々しい。もっとシンプルに行きたいと思うのだけど。頭で考えちゃうのかなあ?でも、アドリブに入るとすっきりする
A"M-FONIA" 
この曲も似たような曲想。全ての曲がピアニストTULEIの曲だから、曲想がどうしても似てしまう。スタンダード・ナンバーを2〜3曲くらい入れればいいものを。だって、スタンダードより良い曲なんてちょとやそっとでは書ける訳ないのだから・・・。この辺は若気の至りってやつで、こういう気負いが見られるのも若さゆえであろう。
B"E-ATMOSPHERE" 
このアルバムでは、やはり、この曲でしょう。YouTubeにもピックアップされているので試聴サイトにURLを記しておいた。アップテンポで進む躍動感あふれるテーマがいいね。美旋律で耽美的な演奏が多い東欧のジャズの中では新鮮に感じられる。ドラムスのソロのためにリフが繰り返され、その後、テーマに戻る。
C"REQUIEM" 
メリハリのないバラード。
D"DEEP FALLING" 
似たような雰囲気の演奏がずーと続いている。
E"INSPIRATION" 
F"MR. JOHNS" 
G"EXPROMT" 
H"NO WORDS"
 

アルバム全部を自分のオリジナルで埋めるのも結構だけど、似たような雰囲気の曲ばかりで新鮮味に欠ける。若手のピアニストって意気込むあまりこういうことをやりたくなってしまうのだと思う。自分のアルバムをオリジナルで埋め尽くしたいというのはミュージシャンとしての夢なのかも知れないが、これにお付き合いさせられるリスナーにも気を使ってほしいというのが本音だ。
「いいテーマに、いいアドリブあり」といつも思っているので、画一的、相似形のテーマ、アドリブにお腹一杯というのが感想だ。逆に、Bの"E-ATMOSPHERE"をYouTubeで1曲だけ聴く分には新鮮かもしれない。願わくば、2〜3曲入れたスタンダード・ナンバーの中で、グループの個性が発揮出来たら余韻も違ったものになっただろう。   (2012.09.06)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=rZPn_8B5N7I&feature=player_embedded#!



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