独断的JAZZ批評 763.

SHAI MAESTRO
ジャズっぽい灰汁とか毒がなくて、美しさだけでは直に聴き飽きてくる
"SHAI MAESTRO TRIO"
SHAI MAESTRO(p), JORGE ROEDER(b), ZIV RAVITZ(ds)
2012年6月リリース スタジオ録音 (LABORIE : LJ18)


イスラエル出身のベーシスト・AVISHAI COHENに見出され、サイドメン・デビューしたのが2007年に録音された"GENTLY DISTURBED"(JAZZ批評 543.)だった。リーダーのCOHENはエモーショナルで超個性派のベーシスト。変拍子もあれば、小節という枠にとらわれない自由奔放な演奏の一方で、決めるべきところはカッチリ決めているところが凄かった。
今回はピアニスト・MAESTROが自らのグループを率いた初リーダー・アルバムだ。


@"CONFESSION" リリカルな美しいピアノだ。ベースとドラムスが加わり少々大げさな演奏へとシフトしていく。すると、またリリカルな演奏に戻る。何とも掴みどころのない演奏だ。単純明快さとは真逆な演奏だ。これがMAESTROのスタイルなのか?
A"SLEEPING GIANT" 
左手でコードを弾くというよりもそれを分散させてアルペジオで演奏することが多いようだ。その分、ジャズっぽさというよりもクラッシクぽさの方が強調されてしまう。
B"BRAVE ONES" 
牧歌的な印象で始まるが徐々に観念的な匂いのする演奏にシフトする。つまるところ、醒めてるんだなあ。こういうのはパスしたくなるんだよね。
C"PAINTING" 
アルペジオがお好きなようで・・・。後にアルコが加わり、更に、ドラムスが加わりド演歌風になっていき、最後はリリカルなピアノに戻る。
D"SILENT VOICE" 
前曲の続きのような曲。
E"ANGELO" 
ヨーロッパ的な哀愁を漂わせたワルツ。あくまでも美しいのだ。
F"LETHAL ATHLETE" 
T. MONKを彷彿とさせるテーマだ。
G"THE FLYING SHEPHERD" 
ひょうきんなテーマの曲も入れてヴァリエーションを増やそうとしている努力は認めるけどね・・・。
H"KALIMANKOU DENKOU" 
"TRADITIONAL"とあるからイスラエル民謡なのだろう。ピアノ・ソロ。こういうソロを聴いているとチマチマしていてダイナミズムに欠けるね。
I"ONE FOR AC" 
AVISHAI COHENのアルバムに出てきそうな変拍子の楽曲。躍動感満載で、これはいいね。これがこのアルバムのベスト。4分33秒で一旦、終わる。
その後、8分35秒あたりから新たな演奏が始まる。いわゆる、
隠しトラックというヤツだ。すべての楽器が打楽器のごとくふるまい、徐々に躍動感と高揚感を増していく。そして11分30秒で全てが終わる。こういう隠しトラックにどういう意味があるのか良く分からない。普通に連続して入っている方が余程楽しめたと思うけど・・・。何を勿体ぶっているのだろう?

美しくて洗練されていることが長所でもあり、短所でもある。ジャズっぽい灰汁とか毒がなくて、美しさだけでは直に聴き飽きてくる。サイドメンの時は良かったけど、リーダーになったらもう一つだったということはよくあることだけど・・・。
これを聴くなら先に紹介した"GENTLY DISTURBED"(JAZZ批評 543.)をお勧めしたい。ダイナミズムが全然違うし、ずっとエモーショナルで刺激的だ。改めて、AVISHAI COHENは凄いベーシストであると同時に、凄いリーダーだと思った。   (2012.07.24)

試聴サイト : http://www.shaimaestro.com/music.php
         http://www.youtube.com/watch?v=F1HeDfvzP8A&feature=related



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