AVISHAI COHEN
オリジナリティと質の高い躍動感に加え、スリリングな展開が絶品だ
"GENTLY DISTURBED"
SHAI MAESTRO(p), AVISHAI COHEN(b), MARK GUILIANA(ds)
2007年9月 スタジオ録音 (RAZDAZ RECORDS : RD4607)

AVISHAI COHENは1970年のイスラエル生まれだという。このアルバムは、丁度、40歳手前の脂の乗り切った頃の演奏だ。そういえば、前掲のOMER AVITALもイスラエルの生まれでCOHENの1年後輩になるという。
AVISHAI COHENというとCHICK COREAの"PAST, PREZENT & FUTURES"(JAZZ批評 5.)が思い出されて、僕の印象としてはすこぶる悪い。COHENはCHICKのバンドに参加してから、俄かに脚光を浴びるようになったが、この頃は、CHICK自身が低調な時期だったから印象が悪くても当然という気もする。近々、COHENの新しいアルバムがBLUE NOTEからリリースされるというし、世間で評判のベース・プレイヤーの評判CDを確認しておこうと思った。
そして、評判だけのことはあったとえらく満足した。これは「流石」といえるアルバムでしょう。

@"SEATTLE" ピアノの最初の1音からして良いね。そこにベースとドラムスが加わり広くて深いアンサンブルが生まれる。このピアニスト、SHAI MAESTROは初めて聞く名前だが、何しろ名前がマエストロだからなあ。上手いのも当然か。
A"CHUTZPAN" 
変拍子と思われるが(数えられないのでそう思うのだが)リズミックな躍動感が満載。3者のプレイがひとつになりアンサンブルとしても素晴らしい。COHENの力強いベース・ワークも際立っている。
B"LO BAIOM VELO BALYLA" 
哀愁を帯びたワルツかと思いきや、さにあらず。途中で、拍子が変わるが、美しく躍動しており、緊迫感がある。単に美しさやリリシズムだけに終わることなく、プラス、躍動感やグルーヴ感が加味されている。
C"PINZIN KINZIN" 
これも変拍子で、7拍子かなと思ったりするが正しいことは良く分からん。こんな難しいリズムでもちゃんと躍動しているから凄いなあ。普通は「変拍子やってみました」までで、躍動感が生まれるまでには至らないものだ。
D"PUNCHA PUNCHA" 
フォークソング、もしくは子守唄のような楽曲。
E"ELEVEN WIVES" 
同じようなリフを繰り返すだけの曲であるが、とても印象に残る重厚な演奏でCOHENのベース・ラインが効いている。
F"GENTLY DISTURBED" 
G"THE EVER EVOLVING ETUDE"
 変拍子であるが(10拍子のようでもある)、僕は今までにこんな種類の躍動感を感じたことがない。この1曲に全てが凝縮している。オリジナリティと質の高い躍動感に加え、スリリングな展開が絶品だ。後半部の3人によるソロもアンサンブルも圧巻だ。いやあ、これには「参った!」
H"VARIATIONS IN G MINOR" 
I"UMRAY" 
J"STRUCTURE IN EMOTION"
 いやあ、最後もビシリと締めてくれますなあ!

変拍子もあるし、小節という枠にとらわれない自由奔放な発想が面白い。それでいて、決めるところはピタリと決まっている。これは他のグループではなかなか真似の出来ないオリジナリティ高い演奏だ。技術的にも能力的にも相当高度な技術と能力が必要になってくるだろう。それでいて、観念的ではなく、エモーショナルだ。常に躍動し緊迫感を湛えている。
ベーシストとしてのCOHENの素晴らしさもさることながら、バンド・リーダーとしての才能の豊かさを見せ付けられた思いで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.03.10)

試聴サイト : http://www.cduniverse.com/productinfo.asp?pid=7666995



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独断的JAZZ批評 543.