独断的JAZZ批評 764.

YOKO MIWA
「教科書通り」の演奏?!
"ACT NATURALLY"
三輪 洋子(p), WILL SLATER(b), SCOTT GOULDING(ds)
2012年5月 スタジオ録音 (JVC : VICJ-61671)

三輪洋子は初めて聴く。
1996年にバークリー音楽大学のオーディションに優勝し、翌年に留学したとある。最近ではジャズ・ミュージシャンと言えば猫も杓子もバークリー音楽大学に留学する時代だから、それが本当に良いことなのか悪いことなのか良く分からない。
長年の演奏活動が評価され、2011年にバークリー音楽大学の助教授に推挙されたとある。日本人では秋吉敏子以来二人目の就任ということらしい。

A"ME DEIXA EM PAZ" 順番が違うが、このアルバムは2曲目のこの曲から聴いていきたい。IVAN LINSの曲。ボサノバ調の軽快で肩の力の抜けた演奏。
B"JEALOUS GUY" 
今度はJOHN LENNONの曲だ。スロー・ロックのとても聴き易い曲だ。丁寧なベース・ソロが続く。グループ全体の印象として端正な感じだ。
C"SQUATTY ROO" 
ブルース・フィーリングたっぷりの歌モノ。良い曲だ。ミディアム・ファーストの4ビートを軽快に刻んで進む。
D"ROLL WITH MY BABY" 
リラックスした演奏で、ライヴのノリだね。ドラム・ソロのためにしつこいくらい長くリフが繰り返される。
E"ONLY LOVE CAN BREAK YOUR HEART" 
NIEL YOUNGの曲。美しいテーマを感情豊かに歌い上げていく。
F"WRAP YOUR TROUBLES IN DREAMS" 
スタンダード・ナンバー。敬愛するBILL EVANSに捧げた演奏とある。心地よい4ビートを刻みながらキレのあるピアノ・プレイを披露している。SLATERの長めのベース・ソロが用意されている。
G"YOKO'S WALTZ" 
H"YOU DO SOMETHING TO ME" 
COLE PORTERの書いた曲。「いいテーマに、いいアドリブあり」を実践してくれた。
@"INNER GLIMPSE" 
アルバム1曲目のこの曲は少々仰々しい。MCCOY TYNERの書いたモーダルな曲だ。音符が洪水のごとく溢れてくる。こういう演奏がずーっと続くと思うとちょっと辟易するが、幸い、仰々しい演奏はこれだけだったので良かった。最初ではなくて、一番最後に聴く方が良いと思う。

このトリオ、どちらかというとワンマン・ピアノだ。そして、三輪は何でもできるピアニストだと感じた。このアルバムの演奏を見ても、モーダルな演奏からボサノバ、スローロック、ポップス、スタンダード・ナンバー、ブルージーな曲まで、てんこ盛りで何でもこなせるようだ。現在はバークリー音楽大学のピアノ科の助教授という立場にもあり、なるほどなと思う。
サイドメンは堅実なサポートと言えるがほとんど目立つことがない。むしろ、グループ・コンセプトを大事にして、従順に連れ添っているという感じかな。従って、丁々発止のインタープレイを期待すると裏切られる。洗練されてはいるが、刺激に欠ける。そういう感じ。
「教科書通り」の演奏と言えなくもないが、上質感のある心地よいピアノ・トリオとも言うことができるだろう。   (2012.08.02)

試聴サイト :  http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A024087/VICJ-61671.html
          http://yokomiwa.com/video/         



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