独断的JAZZ批評 758.

IGOR GEHENOT
独りよがり
"ROAD STORY"
IGOR GEHENOT(p), SAM GERSTMANS(b), TEUN VERBRUGGEN(ds)
2012年4月リリース スタジオ録音 (IGLOO : IGL 232)


1989年、ベルギー生まれのピアニスト、IGOR GEHENOTのレギュラー・トリオによる初アルバム。弱冠23歳で初アルバムをリリースできるというのも凄いが、全ての楽曲をIGORのオリジナルが占めているというのも驚きだ。
僕としては2〜3曲はスタンダード・ナンバーを入れてほしかったところだ。
スタンダードっていうのは長い年月をかけてリスナーの支持を得てきた曲だから人々に訴える何かを持っている。つまり、「良い曲」なのだ。僕は「いいテーマに、いいアドリブあり」といつも思っているので、自作曲だけで固めてしまったのはちょっと残念な気がする。オリジナルがスタンダードを超えるほど良い曲なら話は別だが・・・。

@"PROMENADE" スローロック風のゆったりとした曲で始まる。内省的で幾分暗さを持った演奏だ。
A"LENA" 
ベースのイントロではじまる。ヨーロッパのプレイヤーが好みそうなフレーズ。そこにピアノが絡んでテーマが始まる。徐々に高揚感は増してくるが決して爆発はしないという感じ。
B"A LONG DISTANCE CALL TO JC" 
これも内省的なアプローチから始まる。途中から賑やかな多ビートを刻むが、多分にBRAD MEHLDAUの影響を受けているかのような演奏だ。
C"HIGHWAY AT 2" 
これも静かなインタープレイで始まる。ジャケットの写真を見ると3人が黒い服を着てニヒルに斜に構えているのだが、そのイメージとは似ても似つかぬ乙女チックな演奏に終始する。
D"RUDE AWAKENING" 
今度は力強くビートを打って始まるのだが、それも腰砕け。いつまで経ってもスカッとしないなあ!
E"SOFI'S CURTAINS" 
F"NUITS D'HIVER" 
これは、ヨーロピアン・ド演歌だね。
G"MISTER MOOGOO" 
やっと出ましたハード・ドライヴの演奏。3者の渾然一体となった躍動感があればさらに良かった。ここではTEUNの長めのドラム・ソロが聴ける。
H"GREEN VALLEY" 
これは良い曲だ。MEHLDAUの影響を感じさせる演奏だけど、3人の息が合っている。この3人がやりたい音楽ってこういうのかもしれない。これはいいね。
I"VERTU"
 

総じて演奏時間が短い。10曲で48分というから平均5分を切れる。何とはなしに始まって、何とはなしに終わっている感じ。クライマックスがいつまでも来ないもどかしさ。
こういうのを「独りよがり」と言うんだね。自分たちには伝えたい何かを持っているのだろうけど、それが相手には伝わって来ない。そういうもどかしさを感じてしまう。
案の定、自作曲だけでまとめた10曲は似たようなテーマ、似たような演奏スタイルでどれも変わり映えしない。2〜3曲でもスタンダード・ナンバーが入っていたら全体の印象も大きく変わったに違いない。
まだ23歳と若いし、めげずに頑張って、次にはアッと驚く成長ぶりを期待したいものだ。   (2012.06.12)

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=RxX800rBKZ4



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