独断的JAZZ批評 755.

KIND OF TRIO
ジャズっていうのはメロディーがあって、ハーモニーとリズムで肉付けするように出来ているのだと頷いてしまう
"KIND OF TRIO"
MAX IONATA(ts), REUBEN ROGERS(b), CLARENCE PENN(ds)
2011年3月 スタジオ録音 (VV JAZZ : VVJ 074)


今までのレビューの中でハーモニー楽器を含まないトリオというのは、多分、初めてだと思う。テナー・サックスとベースとドラムスのピアノレス・トリオ。
昔の話で恐縮だが、SONNY ROLLINSの"WAY OUT WEST"という名盤があって、ジャズ喫茶で良く聴いた記憶がある。その時のメンバーというとベースにRAY BROWN、ドラムスにSHELLY MANNEという当時の凄腕が集まった。
このアルバムもメンバーが魅力的だ。MAX IONATAは1972年生まれのイタリア人。ベースにはREUBEN ROGERS。このROGERSはERIC REEDの"SOMETHING BEAUTIFUL"(JAZZ批評 725.)に参加していて、素晴らしいアルバム作りに一役買ったことは記憶に新しい。ドラマーのCLARENCE PENNは昔、小曽根真とも共演経験がある多才なプレイヤーだ。

@"BROTHERHOOD" ピアノもギターもない、いわゆる、ハーモニー楽器がないというのはこれほどの違和感を生むものなのか!直線が3本で面的な広がりや立体感がないという感じ。
A"CON ALMA" 
RUEBEN ROGERSはとても良いベーシストだとは思うけど、ハーモニー楽器の代替えまではできない。
B"KUMICO" 
C"BUT" 
ROGERSのベース音は硬く締まったアコースティックならでは良い音色だ。
D"OUT BACK" 
グルーヴ感の強い曲だが、ピアノがあればもっと刺激的な演奏になっているに違いない。
E"NOUVO CINEMA PARADISO-LOVE THEME" 
ENNIO MORRICONEの「シネマパラダイス 愛のテーマ」 美しいバラードだがハーモニーがないのがちょっときつい。IONATAのテナーは虚飾がないシンプルな演奏ぶりでいいね。
F"THE CHANGE" 
軽快な4ビートを刻むが、これにバッキングの上手いピアノでも加われば、これは最高だろう。
G"TO BE" 
H"RAVEN" 
I"AURORA" 
J"WAITING FOR ELI" 

このアルバムではスタンダード・ナンバーがAとEの2曲。IONATAが4曲、ROGERSが1曲、PENNが4曲のオリジナルを提供している。
アルバム全体の印象としては、ピアノレス・トリオの難しさを感じる。やはりハーモニー楽器がないというのはアンサンブルに立体感と艶っぽさが生まれて来ない。逆に、このアルバムを聴いた後にピアノ・トリオやテナー・カルテットを聴くと凄くハーモニックに聴こえる。音の広がり、立体感を感じるのだ。
ジャズっていうのはメロディーがあって、ハーモニーとリズムで肉付けするように出来ているのだと頷いてしまう。   (2012.05.23)


試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=SUcY1CGCHeI




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