独断的JAZZ批評 741.

JEFF HAMILTON
王道まっしぐら
"RED SPARKLE"
TAMIR HENDELMAN(p), CHRISTOPH LUTY(b), JEFF HAMILTON(ds)
2012年2月リリース スタジオ録音 (CAPRI RECORDS : 74114-2)

前回、JEFF HAMILTONのアルバムを紹介したのは2004年録音の"THE BEST THINGS HAPPEN..."(JAZZ批評 214.)だから、あれからもう8年も経つことになる。時間の速さに慄くばかりだ。今回のアルバムもメンバーは同じ。このグループは10年も一緒にプレイしているという。
当時、若手なんて書いていたピアノのHENDELMANはもう40歳を超えた。若手と言うよりは中堅の域に達した。HAMILTONだって1953年生まれの59歳だ。
JEFF HAMILTONのアルバムはハード・バップ志向のストレートなジャズだ。グタグタ説明を要しない。「聴けば分かる」というジャズだ。

@"AIN'T THAT A PEACH" いきなり来ました、王道ハード・バップ。「なんか、文句あっかー!」ってな感じでグイグイ突き進む。
A"BYE YA" 
HAMILTONといえばブラシの名手。T. MONKの個性豊かな曲の中で、思う存分のブラシ捌きを披露してくれる。エンディングが洒落ている。
B"ON AND ON" 
今度はマレットを手にしている。一転して、異国情緒たっぷりのくつろいだ演奏だ。ベースの定型パターンで始まり、ピアノが美しい旋律を奏でていく。
C"HAT'S DANCE" 
健康的で陽気なジャズ。ここには「ドラッグ」の匂いの欠片もない。
D"TOO MARVELOUS FOR WORDS"
 仕掛けの多いテーマだけど難なく弾きこなしている。アドリブではベースが心地よい4ビートを刻み、ピアノが軽やかに跳ねる。まさに王道まっしぐら。
E"LAURA" 
リリカルな演奏だ。
F"A SLEEPIN' BEE" 
LUTYのベースがフィーチャーされている。太くて締まりのある音色が良いね。続いてHAMILTONのブラシがサクサクと4ビートを刻みノリノリの演奏で終わる。
G"RED SPARKLE" 
タイトルのごとく赤い火花を散らすアップ・テンポの熱い演奏。HAMILTON、本領発揮のゴリゴリ・ドラミング。
H"I KNOW YOU OH SO WELL" 
一転して、美しいしっとりバラード。LUTYがアルコ奏法でテーマにアクセントを添える。その後に続くピチカートが太くて逞しい。ベースの巨人、RAY BROWNの書いた曲。
I"IN AN ELLINGTONE"
 大御所、DUKE ELLINGTONの名前から"ELLINGTONE"と文字っている。グルーヴィな演奏だ。

ピアノのHENDELMANには2010年録音のリダー・アルバムの"DISTINATIONS"(JAZZ批評 648.)というアルバムがあったが、音符過剰でいただけなかった。その点、HAMILTONと一緒にやっているアルバムは抑制が効いていて良い。
このアルバムは「王道まっしぐら」といえるアルバムだ。最近は黒人のトリオでこういうスタイルの演奏をするプレイヤーが少なくなった。モーダルな演奏が多くなった今の時代では、こういうバップ・テイスト満載のアルバムは希少価値さえ感ずる。
近年、黒人よりも白人のプレイヤーにバップ・テイストを大事する傾向があるのはジャズの世界の皮肉だ・・・なんてことを思いつつ、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2012.02.11)

試聴サイト : http://www.amazon.com/Red-Sparkle-Jeff-Hamilton-Trio/dp/B006I01KZA



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