独断的JAZZ批評 742.

STAN GETZ / BILL EVANS
「両雄並び立った」アルバム
"BUT BEAUTIFUL"
STAN GETZ(ts), BILL EVANS(p), EDDIE GOMEZ(b), MARTY MORELL(ds)
1974年8月 ライヴ録音 (MILESTONE RECORDS : MCD-9249-2)


注文しているCDの入荷予定が2月下旬から3月となっているため、穴を埋めるべく急遽注文したのがこのアルバム。"BUT BEAUTIFUL"(ジェフ・ダイヤー著、村上春樹訳、新潮社)の本を読んだ後にYouTubeで見つけたのが、このページの最後に記した試聴サイトの演奏。これがなかなかの演奏で、是非、CDをゲットして全部聴いてみたいと思った次第だ。
このアルバムは1974年8月の録音であるが、そのうち
@AHIがオランダのLARENでのライヴで、残る6曲は1週間後のベルギーでのライヴ録音となっている。

@"GRANDFATHER'S WALTZ" 流石、GETZ!音色がとても良い。EDDIE GOMEZのベース音がいつになく締まっている。MORELLのドラミングも手数は多いが乗っている。何といって、EVANSの切れのあるピアノが素晴らしい。
A"STAN'S BLUES" 曰く因縁の1曲。リハーサルでも演奏しなかったこの曲を本番でいきなり吹き始めたGETZ。ゲストの勝手な振る舞いに怒ったのか、EVANSがアドリブでの演奏を止めてしまう。が、ピアノレスでも何の違和感もない。GOMEZがいいね。
B"BUT BEAUTIFUL" この曲からGまでは、1週間後のベルギーでのライヴ。EVANSのイントロで始まりGETZの優しくて艶のあるテナーが絡む。絶品だなあ!
C"EMILY" 
スタンダード・ナンバーとして愛されている佳曲。なんとも言えぬ深い味わいがある。
D"LOVER MAN" 
ピアノのイントロからテーマに入るテナー。泣かせるね。
E"FUNKALLERO" 
ファンキーなテーマ。ノリノリのEVANSが聴ける!MORELLのドラミングも迫力満点だ。
F"THE PEACOCKS"
 このバラードがまた泣かせるのだ!演奏後にGETZが"HAPPY BIRTHDAY, BILL !"と声を掛ける。
G"YOU AND THE NIGHT AND THE MUSIC" 曲のスタートに"HAPPY BAITHDAY"をソロ演奏!1週間前の無礼を詫びているかのよう。
H
"SEE-SAW" GOMEZのベース音が硬く締まっていて躍動している。続くMORELLのシンバリングもいいね。アップ・テンポの4ビートでガシガシ突進する。ピアノ・トリオ。
I"THE TWO LONELY PEOPLE" GOMEZがアルコ奏法を披露している。これもピアノ・トリオ。

STAN GETZの名盤というと、僕の中では"PEOPLE TIME"(JAZZ批評 231.)が思い起こされる。1991年録音のそのアルバムはGETZがろうそくの炎のように最後の輝きを放ったアルバムでもある。それから3ヵ月後にGETZは帰らぬ人となった。
ひるがえって、このアルバムは1927年生まれのGETZ、47歳の時の脂の乗った演奏だ。
ベースのEDDIE GOMEZも最近は饒舌でギターのように弾くことが多かったがここでのベース・ワークと音色は出色だ。こんなに良い演奏を聴けたのは初めてのことで、これにはちょっと唸った。
GETZとEVANS。「両雄並び立たず」とは世間でよく言われることだが、このアルバムではツアー中のトラブルがあったものの、それを謝る形でGETZが"HAPPY BIRTHDAY"を挿入したりしてEVANSに配慮を示している。そういう意味でも貴重なアルバムであるが、何よりも演奏が素晴らしい。「両雄並び立った」アルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。

試聴サイト : http://www.youtube.com/watch?v=Mzrh3sCK4DM



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