タバコの煙、赤やブルーの照明、皿のあたる音、観客の拍手、そういった様々な要素が重なり合ってひとつの「雰囲気」を作り出している。
僕らは、知らないうちに五感全部を使ってジャズを聴いているということだ。
BRAD MEHLDAU TRIO BRAD MEHLDAU(p), LARRY GRENADIER(b), JORGE ROSSY(ds) 2002年3月22日(金)21:40〜22:50 Blue Note Tokyoにてライヴ
メルドーのライヴは昨年の5月(独断的JAZZ批評 9.)に続いて2回目となる。会場は同じくブルーノート東京だ。今回は息子と一緒に行くことになった。これも一昨年の小曽根真のライヴ以来2回目である。
昨年9月に発売されたCD "PROGRESSION"(独断的JAZZ批評 28.)を聴いて以来、何かすっきりしないわだかまりを感じていた僕は、実は迷っていた。あまり期待できないライヴに行った方が良いか、CDを10枚買った方が良いか。結局、息子の「メルドーを生で聴いてみたい」の一声で出かけた次第だ。
一曲目は5分過ぎから興が乗ってきた。2曲目はリズムは取れるが、何拍子か分からない。難しい曲だ。7/4、5/4、はたまた3/4か皆目見当がつかない。変拍子だということしか分からない。しかし、プレイする3人の呼吸はピッタリ。寸分の狂いもない。摩訶不思議だ。
3曲目、更にテンションが上がってきた。4曲目、グレナディアの野太いベースソロが延々と続く。「凄い!スゴイ!凄すぎる!」ビートの塊だ。ベースのピチカートが打楽器と化す!
5曲目 "SECRET LOVE" 。美しく奏でるバラード。寡黙に感ずるほどに抑制されたピアノの音。「間(ま)」が凄い。アンコールは5/4拍子の
"RIVER MAN"。5拍子というのに、いとも簡単にスウィングしてしまう。全6曲、70分間の演奏だった。
この瞬間、今までのもやもやした霧が晴れた。 "PROGRESSION" で酷評したロシーのドラムスは、むしろ、センシティヴだったし、バランスもとても良かった。力強いベースと三位一体のトリオ演奏は息をもつかせぬ緊迫感と美しさに溢れていた。
では、何故あれほどCDはつまらなかったのか?結局、CDというメディアのそれが限界だと理解した。
ライヴの会場にはタバコの煙、赤やブルーの照明、皿のあたる音、観客の拍手、そういった様々な要素が重なり合ってひとつの「雰囲気」を作り出している。僕らは、知らないうちに五感全部を使ってジャズを聴いているということだ。
所詮、CDは音しか捉えていないということ。その音も完全に写し取ることは出来ない。そこがライヴとの決定的な差になっているのだろう。
だから、 "PROGRESSION"の酷評もまた僕のひとつの素直な感想であったということを付記しておきたい。 (2002.03.23)
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BRAD MEHLDAU