独断的JAZZ批評 715.

SACHIKO YASUI
家族旅行の車の中で聞いてほしい
より一層、その旅行が楽しくなるに違いない
"NANA"
安井 さち子(p), 佐藤 正(b), ジーン 重村(ds), 井上 信平(fl on A,D,G)
2010年9,10月 スタジオ録音 (M&I : MYCJ-30591)


前掲に続いて女流ピアニストのアルバムを購入してみた。何の予備知識もなしに選んだのがこのアルバム。安井さち子は初めて聴くが、事前にネットで試聴チェックしている。
このアルバム、3曲でフルートが参加しているが、それがこのアルバムにより一層の親しみやすさを提供している。。加えて、タイトルの「ナナ」とは生まれたばかりの長女の名前だという。そうか!この幸せに満ちたアルバムの根元には家族への賛歌が含まれていたのだ。そういうアルバム。人に幸せを感じさせる暖かな雰囲気に包まれている。それはまさに安井自身がその真っ只中にいることの証左でもある。
@、B、C、I、Jの5曲が安井のオリジナル。

@"EMERALD ISLAND" 幸せな安井の心情が「臆面もなく」表れている。軽快なリズムに乗ってピアノが踊る。
A"EMILY" 
JOHNNY MANDELの書いた佳曲。この曲を挿入したくなる安井の気持ちが理解できる。井上のフルートが心地よい。
B
"LET'S TALK ABOUT GOOD OLD DAYS" 安井のオリジナル。スタンダード・ナンバーに共通する心地よさを持っている曲。佐藤のベース・ソロもよく歌っていていいね。
C
"PLEASE GIVE ME A HINT" これも安井のオリジナル。随分お洒落な曲を書くなあ!驚いた。
D"TICO TICO" 
この曲はラテンの名曲だという。聞けば、「ああ!この曲か!」と思うに違いない。メロディとアドリブを執るフルートが活き活きとしている。
E"I WISH" 
この曲はSTEBIE WONDERの曲だという。そうか!安井はこういう曲まで食指を伸ばしているのか!顔に似合わずグルーヴィーに演奏している。
F"YESTERDAY ONCE MORE" 
これも幸せに満ちた音楽。カーペンターズの名曲がピタリと嵌っている。
G"SOUL BOSSA NOVA" 
この曲を聴くと、僕の中ではHERBIE MANN(fl)を思い出す。
H"INVITATION" 
スタンダード・ナンバー。この曲というと何といっても、AL HAIGの"INVITATION"(JAZZ批評 47.)を思い起こさせる。ここでの安井のピアノは乗りまくっているね。こういう一面もあるんだ!
I
"STAGE DIALOGUE" この安井のオリジナルはグルーヴィでブルージー。こういう演奏はアルバムの中でアクセントになる。顔に似合わずガッツあるプレイを披露してくれる。
J
"STARLIT SKY" 最後を締めるピアノ・ソロ。幸せに満ちた演奏だ。いい曲だ。


僕はこのアルバムが好きだ。何故なら、安井は「臆面もなく」自分の幸せを披瀝しているからだ。そこがいいのだ。聴いて、幸せ感を実感できるのだ。その「衒いのなさ」が素晴らしい。これは「出来そうで出来ない」ことだと思う。
僕が考えるシチュエーションとして、このCDは家族旅行の車の中で聞いてほしいのだ。より一層、その旅行が楽しくなるに違いない。   (2011.09.10)

試聴サイト : http://morawin.jp/package/80312133/MYCJ-30591/



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