独断的JAZZ批評 696.

CARL WINTHER
テーマにしてもアドリブにしても懲りすぎ、考えすぎなのだ
自然発生的に心の中から湧き出たという感じではなくて、頭で考えて作りに作ったという感じ
"CONTACT"
CARL WINTHER(p), JOEL ILLERHAG(b), JOHAN KOLSUT(ds)
2009年5月 スタジオ録音 (CONNECTIVE : CTV36522)

下記のサイトで、このCARL WINTHER TRIOの演奏を試聴したとき、この感動はMAGNUS HJORTH(JAZZ批評 537. & 555.609.)を最初に聴いたときの感動と似ているなと思った。で、即、注文を出してゲットしたアルバムだ。録音時、弱冠25歳という若さと、小気味の良い硬質な演奏スタイルはじっくりと聴いてみたいという期待感を抱かせたものだ。
全ての曲がCARLのオリジナル。結果的にはこれが良かったかどうか疑問が残るが、それは後ほど。


@"RUFF STUFF" 難しい曲だ。とても口ずさむことなんて出来ない。モーダルで硬質なジャズだ。ベースが太くて重い4ビートを刻むとピアノはカチカチとしたフレーズを積み重ねていく。ドラムスの叩きっぷりに容赦はない。
A"NOVEMBER" 
3者が対等に渡り合うフリー・テンポのインタープレイ。その後、ベースのILLERHAGが主役となって長めのソロを執る。
B"ABSTRACT" 
恐怖映画の一シーンに出てきそうな緊張感溢れるハードコア・ジャズ。追いつ追われつのシーンに使ったら面白そう。
C"SEVEN STEPS AHEAD" 
すっきり感のない変拍子。生理的に受けつけられない。何もこんなに難しいこと好んですることもないのにと思ってしまう。
D"A LITTLE DREAM" 
E"LEFT ALONE" 
WINTHERのオリジナルであるからMAL WALDRONの有名曲とは何の関係もない。ハードなプレイだ。ドラムスのKOLSUTは負けじとドラムを叩きのめしている。
F"MINORDIC MOOD" 
これもフリー・テンポのインタープレイ。下手すると、自己満足だけで終わってしまう。
G"STRESS"
 
このアルバムの中ではこの演奏が一番いい。これを試聴して、即、買いだと思ったのだが、よーく聴いてみるとこれも懲りすぎだね。

視聴サイトで聴いた印象と大分違う。全曲、WINTHERのオリジナルということで、同じような曲想、同じような演奏スタイルで、終いには聞き飽きてくる。やはり、ここは2〜3曲のスタンダード・ナンバーを入れてその解釈を問うてみるべきだった・・・と思う。
視聴サイトのちょい聴きでは良いなあと思ったアルバムが、実際に購入してフルに聴いてみるとそれほどでもなかったというのは良くあることだ。MAGNUS HJORTHと比較したのはMAGNUSに失礼だったかも・・・。
3人、一人一人の腕前は相当のものだと思う。だけど、やっていることがモーダルな演奏が主体で色香のない無機質な匂いがする。テーマにしてもアドリブにしても懲りすぎ、考えすぎなのだ。自然発生的に心の中から湧き出たという感じではなくて、頭で考えて作りに作ったという感じ。もっと、ストレートな表現方法を考えたほうがいいのではないか?これでは自己満足で終わってしまう。
今回は全ての曲をオリジナルで揃えたが、彼らがスタンダードを演奏したらどういう演奏をするのだろうか?未だ若いのだし、もっとスタンダード・ナンバーで表現力を磨いたほうがいいのではないか?それからでも遅くはないと思うのだが、どうだろう?次は是非ともスタンダードを聴いてみたい。    (2010.05.28)

試聴サイト : http://connectiverecords.wordpress.com/artists/carl-winther/
         http://www.youtube.com/watch?v=MUIsM86SC8Q



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