ANDREA BENEVENTANO
満遍なく80点という感じなのだ
"THE DRIVER"
ANDREA BENEVENTANO(p), FRANCESCO PUGLISI(b), NICOLA ANGELUCCI(ds)
2010年リリース スタジオ録音 (ALFA MUSIC : AFMCD143)

ANDREA BENEVENTANOの"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)のアルバム・レビューを書いたのはもう7年も前のことだ。それ以来のリリースということだから、余程寡作なミュージシャンなのだろうか?HMVのレビューでは「作品を出さなくても生活できるから、焦って作品を創らなくてもいいんだ」というようなコメントが書いてあったが、7年ものブランクがあったとすれば本当にそうなのかも知れない。
前作"TRINACRIA"ではドライブ感満載の演奏からしっとりと情感豊かな演奏までオールラウンド・プレイヤーという印象さえ与えたが、決して広く浅くという意味ではなく、むしろ、一つ一つを深く掘り下げた歌心が印象的であった。
今回のアルバム、メンバーは前回から一新されている。CとEを除く全ての曲がBENEVENTANOの書いたオリジナル。

@"COOL RIVER" 
メロディアスなテーマを透明度の高い音色とクリアなタッチで歌っていく。
A"MIDGET STEPS" 
一瞬、"GIANT STEPS"かと見紛う。"GIANT STEPS"を文字って正反対の"MIDGET STEPS"とは何やら意味深げ。おちょくっているわけではないのだろうけど、駄洒落的なタイトルがこれ以外にもいくつかある。演奏はというとアップ・テンポに乗ってグイグイと前に突き進む。
B"THE DRIVER" 
ちょっとひょうきんな感じもするブルース。ピアノ〜ベース〜ドラムスのソロと順番に回ってテーマに戻る。
C"WHEN SUNNY GETS BLUE"
 スタンダード・ナンバー。大好きな楽曲のひとつ。美しくて少し気だるいテーマを忠実に演奏する姿に好感が持てる。差別化を図るのはアドリブで・・・と思っていると2コーラスで終わってしまう。3者のバランスも良くて、ベースもブラシも良く効いているが、何かもうひとつ物足りない。
D"PASSING SEASONS"
 きらりと美しい小品といった感じの佳曲。ここではベースのPUGLISIがソロでよく歌っている。
E"IF I SHOULD LOSE YOU"
 二つ目のスタンダード・ナンバー。しっくり感のない演奏だと思っていたらワルツで演奏しているのか?何故、こういうスタンダードを素直に弾けないのかなあ?最後はだらだらとフェード・アウト。
F"I GOT YOUR RHYTHM"
 "I GOT RHYTHM"のようで、そうでない。モチーフとしてインスピレーションを得たのだろう。
G"DONNA QUEE"
 駄洒落的ではあるが、これも"DONNA LEE"から発想を得ている。明るい曲想でミディアム・テンポで4ビートを刻む。心地よい演奏だ。
H"MY GOSPEL"
 今までのどの曲とも曲想が違ってゴスペル風。

BENEVENTANO、自らのライナー・ノーツに「全てのメンバーと共有する上で最も重要な本質的なものは『歌えること〜メロディに富んでいること』の追究である」と語っている。
確かにどの曲もテーマ、アドリブともメロディアスである。が、その一方で物足りなさも残る。全体に軽い印象。"TRINACRIA"の時のような突詰めた美しさとか超ド級高速ブルースなどの刺激的な演奏が影を潜めて、満遍なく80点という感じなのだ。
初めてANDREA BENEVENTANOのアルバムを買うというなら、断然、"TRINACRIA"(JAZZ批評 168.)をお勧めしたい。   (2010.11.23)

試聴サイト : http://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ101005-53



独断的JAZZ批評 663.