RONNIE LYNN PATTERSON
PATTERSONの唸り声がかなり大きく録れている
これがさかりのついた猫の遠吠えのようでもの凄く耳障り
"MUSIC"
RONNIE LYNN PATTERSON(p), FRANCOIS MOUTIN(b), LOUIS MOUTIN(ds)
2009年10月 スタジオ録音 (OUT NOTE RECORDS : OTN 001)
フランスのピアニストらしく、頑固といわれようが偏屈といわれようが我がスタイルを押し通す個性派ピアニスト、RONNIE
LYNN PATTERSONの2枚目のアルバムが登場した。最初の1枚目が2008年録音の"FREEDOM
FIGHTERS"(JAZZ批評 522.)で聴き込むほどにその虜になってしまうような不思議な力を持ったアルバムであった。他に類を見ない独自の音世界ということで星5つを献上している。
今回のアルバムでは、ベースはSTEPHANE KERECKIからMOUTIN兄弟のひとり、FRANCOIS
MOUTINに替わった。ドラムスは同じくLOUIS MOUTINだ。スタンダード・ナンバーとジャズの巨人のカバー曲で構成されている。
@"LAZY BIRD" J. COLTRANEの曲からスタート。レーベルが替わってレコーディング・エンジニアも替わったのだろう。PATTERSONの唸り声がかなり大きく録れている。これがさかりのついた猫の遠吠えのようでもの凄く耳障り。
A"MOON AND SAND" ピアノの指捌きとは全然関係ないような唸り声が困った。FRANCOISのベース・ソロは速弾きで饒舌。STEPHANE
KERECKIに比べると音が軽いし演奏に落ち着きがない。このFRANCOIS MOUTINの参画は果たして良かったのか大いに疑問だ。
B"EVIDENCE" T. MONKの曲。超個性的なテーマ。繰り返しになるが、このPATTERSONの唸り声は邪魔だ。興が醒めるというもの。
C"ALL BLUES" リリカルなピアノのイントロで始まるが、そうしているうちに例のベースの定型パターンが始まる。そして初めて"ALL
BLUES"と分かる。しかし、なかなか躍動感が湧いてこない中、PETTERSON節は健在だ。
D"BLUES CONNOTATION" ORNETTE COLEMANの曲だという。一癖も二癖もあるテーマはいかにもCOLEMANらしい。躍動感溢れるというよりも絡みつくような粘っこい演奏が特徴的。
E"IT'S EASY TO REMEMBER" RICHARD RODGERSの書いた美しい佳曲。LOUIS MOUTINのドラミングは表情が豊かだが、
ハイトーンを使ったFRANCOISのベース・ソロは食欲をそそらない。
F"SUMMER NIGHT"
G"BLUE IN GREEN" 超スローなバラード演奏。リリカルなピアノのソロで始まるが、テンションが高まるにつれて遠吠えが復活する。これは勘弁して欲しいなあ。
今回のアルバムではベーシストがSTEPHANE KERECKIからFRANCOIS MOUTINへと変更されているが、ここは疑問符のつくところだ。KERECKIの方がこのピアニストにはズーッと合っていたのでは?重低音をしっかり押さえたベース・ラインはダイナミズムを醸成していたし、何よりも、3者のアンサンブルが素晴らしかった。翻って、F.
MOUTINのベースは躍動感が不足していて一体感もイマイチだ。
前掲のA. BENEVENTANOのアルバムもそうであったが、初めて日本に紹介されたときのアルバムの方が断然良かった。このアルバムも然り。初めてRONNIE
LYNN PATTERSONを買うなら"FREEDOM FIGHTERS"(JAZZ批評 522.)をお勧めしたい。 (2010.11.27)
試聴サイト : http://www.7digital.com/artists/ronnie-lynn-patterson/music