MAKOTO OZONE / PHIL WILSON
小曽根真、21歳
このアルバムは、小曽根の礎となっているのだろう
"LIVE !! AT THE BERKLEE PERFORMANCE CENTER"
PHIL WILSON(tb), 小曽根 真(p)
1982年11月 スタジオ録音 (CAPRI RECORDS LTD. : CAPRI 71004-2)


このアルバムは少々古い1982年の録音盤だ。復刻盤がリリースされたのが6月で、すぐに入手したのだが、何となく、レビューを書くのを今まで引っ張ってしまった。
小曽根真は1961年生まれというから、このアルバムの録音時が21歳という若さだ。1980年に渡米し83年にバークリー音楽大学を卒業したというから、本アルバムはバークリー在学中の録音となる。確かに、アルバムに写っている小曽根の写真は若い。というより、未だ童顔だ。
一方のトローンボーン奏者、PHIL WILSONは、小曽根にとってバークリーの師ともいうべきプレイヤーだ。このアルバムは、同大学内での師弟コンビのデュオ・ライヴが収められたものである。

トロンボーンのアルバムというのは今までにほとんど紹介していたないが、唯一あるのがGIOVANNI MIRABASSI(p)とGLENN FERRIS(tb)とFLAVIO BOLTRO(tp)が参加した変則トリオの"AIR"(JAZZ批評 164.)で、これは1曲目の"LILI EST LA"が素晴らしかった。とても良いアルバムなので参考までに紹介しておきたい。

@"STELLA BY STARLIGHT" テーマをWILSONがとり小曽根はバッキングに徹するが、これが素晴らしい。演奏がキレにキレテいるのだ。21歳にしてこの演奏というのは凄いことだ。改めて、小曽根の凄さを再確認した。本当に、「これは只者ではないな」と思う。ここでは、師弟の丁々発止のインタープレイが聴ける。そして、やんやの喝采が全てを物語っている。
A"HERE'S THAT RAINY DAY" これもスタンダード。WILSONがテーマをとるのも同じ。師弟の心通う演奏が堪能できる。瞬時に反応していく小曽根のピアノが凄い。
B"GRAVY WALTZ" 繰り返すが、これが小曽根、21歳のときの演奏なのだ。この屈託のないおおらかな歌心は天性のものか?
C"THESE ARE THE DAYS" 温かみのあるハートフルなWILSONのトロンボーンに絡む小曽根のピアノは刃物のような切れ味の鋭さで対抗するが、そこから生まれるアンサンブルは明るさとおおらかさを秘めた心地よいものだ。トロンボーの音色が醸し出す妙かもしれない。
D"BLUES MY NAUGHTY SWEETIE GAVE TO ME" ミディアム・テンポで奏でる溢れんばかりのダイナミズム。二人が奏でる小宇宙。WILSONのソロに続く小曽根のピアノには大きくて確かな自信が漲っている。これが21歳の時の演奏だなんて、俄かには信じ難い。
E"GIANT STEPS" この曲ではWILSONの速射砲のようなトロンボーンの妙技が聴ける。負けじと小曽根もピアノの速射砲で返している。二人の丁々発止のやり取りが絶妙で、合間に聴衆の笑い声まで聞える。もう、開いた口が塞がらない!いやはや、凄い迫力だ。

このアルバム、タイトルにもあるようにバークリー音楽大学の中にあるパフォーマンス・センターで大観衆を前に演奏されたものらしい。大観衆の前でなければ、恐らく、これほどハイレベルなパフォーマンスを披露することは出来なかったであろう。ここには、その一部始終が収録されている。
小曽根真、21歳の時に記録されたこのアルバムは2007年録音の傑作ソロ・アルバム"FALLING IN LOVE , AGAIN"(JAZZ批評 436.)へと、脈々と受け継がれ、小曽根の礎となっているのだろう。
小曽根真のパフォーマンスを語る上で、絶対に欠かすことの出来ないアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2010.10.13)

試聴サイト : http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/B003EGDDJC/pageturners0c




独断的JAZZ批評 656.