TIM RICHARDS
選曲からして、理屈抜きに楽しもうというサービス精神に溢れているが・・・
"SHAPESHIFTING"
TIM RICHARDS(p), DOMINIC HOWLES(b), JEFF LARDNER(ds)
2009年12月 スタジオ録音 (33RECORDS : 33JAZZ205)

TIM RICHARDSのCDは今までに2枚紹介しているが、2002年録音の"TWELVE BY THREE"(JAZZ批評 175.)は秀逸なジャケット・デザインと相俟って演奏も新しい土の匂いがした優れものだった。その時、僕は、このグループは"MODAL & BEBOP"とも言うべきコンセプトで「新しい土の匂いがする」と書いた。あらためて取り出して聴いてみたけど、やはり「良いものは良い」 特に、ベースのHOWLESは強いビートを身上としており、このグループの要的存在であった。
もう1枚の"THE OTHER SIDE"(JAZZ批評 250.)は曲数が多くて総花的な印象が強かったが不要な何曲かを削除して聴けば、これはこれでよかった。
翻って、このアルバムは2009年録音でメンバーはベースにDOMINIC HOWLESが参加しているが、ドラマーはJEFF LARDNERに替わっている。

@"SHAPESHIFTING" ピアノの重低音で始まるグルーヴィな1曲。テーマのさびの部分では4ビートを刻む。曲のエンディングが何とも中途半端でスカッとしない。
A"UN POCO LOCO" B. POWELLが書いたひょうきんな曲。古き時代が懐かしくなるようなテーマと演奏。
B"ELEVENTH HOUR" BEBOPがメインかと思えば、このようにモーダルな演奏もある。
C"BOLIVIA" 今度はCEDAR WALTONの曲だ。ノリノリの演奏が楽しめる。躍動するHOWLESのウォーキングがいいね。LARDNERのドラム・ソロもフィーチャーされているが、このドラマーは音が軽いので圧倒するほどの迫力はない。
D"PRELUDE TO A KISS" D. ELLINGTONの名曲。重々しい重厚なイントロで始まるが演奏自体はサラッと軽めだ。
E"YOU'RE MY EVERYTHING" 軽快な4ビートに乗っておなじみのスタンダード一発。
F"THIS HERE" 一転して、ファンキーなBOBBY TIMMONSの曲。ファンキーな曲だから荒っぽくやれば良いってもんじゃない。
G"SERAGLIO" 退屈なRICHARDSのオリジナル。
H"THE MESSAGE" グルーヴィなバップ・テイスト。
I"BRISTOLIAN THOROUGHFARE" 途中から4ビートを刻むが、HOWLESのベース・ワークが躍動している。
J"LOVE FOR SALE" COLE PORTERの曲。ベースの定型パターンが延々と続くのかと思えば、4ビートを刻む。ドラムスが少々荒っぽい。
K"COME SUNDAY"
 最後もD. ELLINGTONの曲。

選曲からして、理屈抜きに楽しもうというサービス精神に溢れている。言っちゃあ悪いが、ピンからキリまでごった煮状態だ。なにも高尚なことを要求しなければ十分に楽しめる。これはこれで良しだろう。楽しめるが、深さはないので何回も聴いていると必然的に飽きてくる。四の五の言わずにその瞬間が楽しめれば良いというスタイルだ。
そういう意味では先に紹介した"TWELVE BY THREE"の方が深みもあって永きにわたって楽しむことが出来るだろう。TIM RICHARDSを初めて聴くという人には是非とも"TWELVE BY THREE"をお勧めしたい。   (2010.06.03)

試聴サイト : http://www.timrichards.ndo.co.uk/soundfiles.html



独断的JAZZ批評 630.