PETER BEETS
「何か、文句あっか!?」てな感じで実に潔い

「いやいや、何も文句は御座いません!」
"FIRST DATE LIVE"
PETERE BEETS(p), MARIUS BEETS(b), JEFF HAMILTON(ds)
1996年5月 ライヴ録音 (MAXANTER : MAX 75905)


結論を先に言ってしまおう。これは「血沸き、肉踊る」素晴らしいライヴ・アルバムだ。ピアノ・トリオ好きで、なおかつ、バップが好きならば躊躇せずに買うべき。
正確に言うと、このアルバムの録音日は1996年の5月25日で、しかも、ライヴ録音だ。このアルバムを録音した翌日の26日に"FIRST DATE"(JAZZ批評 182.)のスタジオ録音盤が録音されたという。いわば、このアルバムは事前リハーサルみたいなものだった。ところが、蓋を開けてみるとこれが実に素晴らしい。ライヴの空気をしっかりと記録しているのだ。ここに詰まっているのはライヴの迫力、昂揚感、躍動感なのだ。何か文句あるか!ってな感じで実に潔い。因みにこのアルバムに収録された@〜Eはスタジオ録音盤"FIRST DATE"にも全て収録されている。ライヴとスタジオ録音の違いを肌で感じるに、これほど相応しいアルバムはない。

@"TRICOTISM" 
僕の大好きな楽曲のひとつ。O. PETTIFORDの書いた曲で、いかにもジャズらしいテーマがいい。HAMILTONのブラッシュ・ワークに乗ってピアノとベースがユニゾンでテーマを奏でる。お兄さんのMARIUS BEETSのベース・ワークが素晴らしい。ベースの音色が唸っているものね。
A"BEBOP" 
アップ・テンポの4ビートを逞しく刻んでいく。まさに、白熱のライヴを堪能できる。兎に角、サポートが素晴らしい。こういうサポートを受ければピアノだって負けてはいまい。ノリノリの演奏でスカッとする。これで聴衆が乗らないわけがない。聴衆の熱気がビシビシ伝わって来る好演。
B"DEGAGE" 
C"FIRST SONG" 
PETERのオリジナル。なかなかいい曲だ。ここではミディアム・テンポの心地よい4ビートを刻んでいく。HAMILTONの軽快ではあるが逞しいブラッシュ・ワークに乗ってPETERのピアノが気持ちよさそうに歌っている。ベース・ソロとそれに続くドラムスとの8小節交換を経てテーマへと戻る
D"CON ALMA" 
Aと同様にD. GILLESPIEの書いた曲。この辺の選曲にPETERのバッパーとしての資質が垣間見れる。ドラムスの長めのソロで始まり、テーマに移る。
E"It Has HappEnd" 
今までのアルバムでは"IT HAS HAPPENED"と記載されていた。今回は"HAPPY END"と"HAPPENED"を掛け合わせた洒落かもしれない。このアルバムの中では比較的しっとり系のワルツ。勿論、アドリブに入ると快いビートを刻んでいく。太くアコースティックなベースの音色がいいね。。
F"TWO BASS HIT" 
アップ・テンポで突き進む4ビート。「何か、文句あっか!?」てな感じで実に潔い。「いやいや、何も文句は御座いません!」 聴衆の歓声を聞けば、このライヴの素晴らしさに合点がいく。

今までに紹介してきたPETER BEETSのトリオ・アルバムの5枚の中では、"FIRST DATE"(JAZZ批評 182.)と"PAGE TWO"(JAZZ批評 133.)が断然良かった。その中でどちらが好きかと問われれば、"FIRST DATE"の方を選びたい。MARIUSとHAMILTONとの絶妙な一体感、加えて、躍動感も緊密感も申し分ない。
更に、スタジオ録音の5つ星を選ぶか、ライヴ録音のこのアルバムのどちらを選ぶかと問われれば、ライヴ盤のこのアルバムを選びたい。結果として、PETER BEETSのアルバムでは一番古いこのアルバムが一番良かったということになってしまった。
天衣無縫、傍若無人な若者らしいアルバムが少なくなった現在、こういうアルバムは非常に貴重だ。白熱のジャズ・ライヴというジャズの原点を思い知らせてくれるアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2009.09.15)



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独断的JAZZ批評 581.