CARSTEN DAHL・MADS VINDING・ALEX RIEL
ていうか、こういうアルバム作りそのものが面白くない
"IN OUR OWN SWEET WAY"
CARSTEN DAHL(p), MADS VINDING(b), ALEX RIEL(ds)
2005年〜2007年 ライヴ録音 (STORYVILLE : 101 4261)


この3人のプレイヤーによる傑作は1999年録音の"SIX HANDS THREE MINDS ONE HEART"(JAZZ批評 322.)が咄嗟に浮かぶ。同じ面子のライヴ録音となれば、いやが上でも期待感は膨れ上がる。前作はMADS VINDING 名義のアルバムだったが、今度のアルバムは3人の連名だ。レコード会社もSTUNT RECORDSからSTORYVILLEに変わった。だからというわけではないだろうが、このアルバムには重大なミスがある。"IN
OUR OWN SWEET WAY"と銘打っているが、実は、"IN YOUR OWN SWEET WAY"が正しい・・・と思うがいかがだろう?
いつの間にか"YOUR"が"
OUR"に変わってしまった。アルバム・タイトルがこういうわけだからネット検索すると間違ったタイトルと思われる"IN OUR OWN SWEET WAY"がわんさか出てくる。これには作曲者のDAVE BRUBECKも目を白黒させたことだろう。アルバム・タイトルは間違っているが曲名紹介では正しく記載されている。それとも意識的なものなのだろうか?(とりあえず、ジャケット通りに記載した)
ついでに言うと、ネットのHMVでは"IN
OUR OWN SWEET AWAY"になっていて二重の間違いがある。前掲のKJBのアルバムの出鱈目な曲順紹介といい、こういう粗捜しをすると枚挙に暇がない。自戒を込めて気をつけよう。

@"IN YOUR OWN SWEET WAY" 軽快なピアノで始まるがベースが入ってきて音色の悪さにがっくり来る。もともと、このVINDINGはアンプの増幅に頼るタイプなのだが、それが一層酷く聞こえる。これは興醒めというものでしょう。
A"MARIA GENNEM TORNE GAR"
 1曲目から転じて美しいバラード演奏になる。"SIX HANDS・・・"をぱくったような構成になっているが、"SIX HANDS"の"SALME VED VEJS ENDE"の方が百倍素晴らしい。こちらは甘さに流された冗漫な演奏だ。
B"IT COULD HAPPEN TO YOU" 
モゴモゴ・ベースの面目躍如?
C"BEAUTIFUL FRIENDSHIP" 
偶数番はバラード。
D"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE" 
いやあ、アグレッシブでいい演奏だ。ベースとドラムスの8小節〜4小節交換を経てテーマに戻る。1曲目に比べるとベースの音色が大分締まっている。このアルバムは2年間の録音からピック・アップしているので、その都度、録音にばらつきがあるのだろう。
E"PEACE" 
1曲おきにバラードが挿入されている。この曲もHORACE SILVERの手になるバラード。リスナーの反応もいまいち。
F"NIGHT AND DAY"
 奇数番はアグレッシブな演奏が挿入されている。どれも歌モノなので味付けが良く似ている。アドリブを途中から聴き始めるとどれがどの曲の演奏か僕には分からない。

このアルバムは明らかに"SIX HANDS・・・"を意識している。というよりパクリに近い。レコード会社が変わって、二匹目の泥鰌を狙ったのだろう。似たような選曲、似たような構成、似たようなアドリブ・・・というわけで、期待が大き過ぎた面、落胆も大きかった。何しろ、このアルバムは2005年から2007年にかけてのCOPENHAGEN JAZZHOUSEでの演奏をピック・アップして編集したものらしい。ここでは頻繁にこのトリオのライヴが行われているのだろうか?
初めて、この3人のトリオ演奏のアルバムを買おうという方には、何が何でも"SIX HANDS THREE MINDS ONE HEART"(JAZZ批評 322.)をお勧めしたい。こちらの方がスリリングで遊び心もある。購入以来何回も聴いているが聴き飽きることがない。既に持っている方には、この"IN YOUR OWN・・・"はパスしても良いだろう。あえて所有する必要のないアルバムだと思う。
とは言え、買ってしまったら捨てるほどのアルバムでもないので僕は置いておくが。あくまでも、この3人のプレイヤーが成し遂げた仕事としては満足というまでは行かない。
ていうか、こういうアルバム作りそのものが面白くない。   (2009.05.18)

試聴サイト : http://www.myspace.com/dahlvindingriel



独断的JAZZ批評 557.