TLB
常にインプロヴァイズされたインタープレイへと収斂していくので、曲ごとの妙味みたいなものが欠ける嫌いがある
それが唯一の欠点かもしれない
"TRIPLE CROSS"
CLAUDE TERRANOVA(p), TONY BONFILS(b), CHRISTIAN LETE(ds)
録音年月不明 スタジオ録音 (BLACK & BLUE : BB 702 .2)
TLBとは3人の頭文字をとったグループ名のようだが、リーダーはCLAUDE TERRANOVAというピアニストらしい。いずれにしても、僕にとっては初めて聴くグループだ。このアルバムを注文した後に、YouTubeにプロモーション・ビデオが投稿されているのが見つかった。その映像を見ながら「これは失敗したかもしれない」と思ったものだ。そう思った最大の理由はベースがアンプに頼った弾き方だったからだ。チマチマと弦を爪弾くように弾いていたので、これは期待薄と思ったのだ。
開封したCDをトレイに載せて、また、びっくり。「これは意外や、いけるかも!」と思ったのだ。3人の共作とも、インプロヴィゼーションともいえるチューンが7曲ある。このグループの真価はこのインプロヴィゼーションにあると言っても過言ではないだろう。
@"LA PLAINE" いきなり3者のインタープレイが炸裂する。これは全13曲に共通するこのグループのスタイルだ。常にインプロヴァイズされたインタープレイへと収斂して行く。テーマというのは彼らにとってはひとつの素材。その素材を縦横無尽に料理していくことにこそ全てのパワーがかけられている。いわば即興集団なのだ。
A"URGENCE"
B"SAHARA"
C"GIANT STEPS" J. COLTRANEの曲であろうが、次のビートルズの「ミッシェル」であろうが、突き進む方向性は同じだ。ある意味、テーマは何でも良いのかも知れない。
D"MICHELLE" 勿論「ミッシェル」のテーマはあるが、事前に言われていないとそれと気がつかないのではないだろうか?美しさが凝縮したインタープレイ。
E"FOLKY-SONG"
F"SEDA"
G"VITTORIA" なかなか面白いテーマでこれはユニーク。3人のオリジナルでいい味出している。
H"SOLAR"
I"VAPEUR D'EAU" 静かに深く躍動する・・・そういう音楽だ。CARSTEN DAHL "MOON WATER"を想起させる。
J"SUMMER TIME"
K"TRIPLE CROSS"
L"LETTRE OUVERTE"
このアルバムを聴きながら、想起したアルバムがある。それはCARSTEN DAHLの"MOON
WATER"(JAZZ批評 246.)だ。前掲のアルバム"IN OUR OWN SWEET WAY"(JAZZ批評 557.)のようにバップに根ざした面があるかと思えば、インプロヴィゼーションに重きを置いた面の2面性があるが、どちらがDAHLの本質なのかは未だ分からない。そういえば、そのアルバムのARILD
ANDERSENのベース音もダボついていたっけ。ただ、"MOON WATER"のほうがもっとアグレッシブで激しさを秘めていた。
話が横道に逸れてしまった。本題に戻ろう。
このアルバムであるが、3者が対等にインタープレイを演じあっており、丁々発止の駆け引きやスリリングな展開を満喫できる。唯一、増幅に頼ったベース音が気に入らないが、その分を補って余りあるピアノ・トリオの妙を堪能できるはず。3者の緊密感、丁々発止のインタープレイから湧き上がる躍動感、そして、全編に流れる美しさがある。
このグループは常にインプロヴァイズされたインタープレイへと収斂していく。だから方向性が皆同じ方向を向いているので、曲ごとの妙味みたいなものが欠ける嫌いがある。それが唯一の欠点かもしれない。 (2009.05.23)
試聴サイト : http://claudeterranova.free.fr/