独断的JAZZ批評 556.

KJB
丁々発止のホットなプレイとは反対に、以心伝心のクールなプレイなのだ
"NEAR AND FAR"
BERT SEAGER(p), JOHN LOCKWOOD(b), 池長一美(ds)
2008年1,7月 スタジオ録音 (INVISIBLE MUSIC : IM-2043)


前掲のMAGNUS HJORTH絡みに購入してみたアルバムだ。MAGNUS HJORTHが6月に東京でライヴ活動を行うが、そのピアノ・トリオに日本から参加するのがこの池長一美(ds)だ。そのライヴを聴く前に池長のドラムスを確認しておこうと思った。
3人の頭文字をとって"KJB"というこのなのだが、何とも、簡単なネーミングだ。Kが最初に来ているので池長がリーダー格なのだろうか?
ところで、このアルバムのジャケットに記してある曲順とCDをトレイに入れて表示される曲順が半分ほど違っている。どちらかのミスと思われるが、ジャケットの表記が間違っているように思う。何故なら、7曲目は間違いなくR. ROGERSの"FALLING IN LOVE WITH LOVE"であるからだ。(ヒトのことは言えないが)この手の間違いは結構ある。次回紹介しようと思っているアルバムなどはアルバム・タイトルまで間違っているのだから、驚くにはあたらない。
こういうことは流れてくる音楽とは関係ないことだが、聴こうとする意欲が萎えてくるね。

@"ONE FOR MY BABY"
 
A"SILVER'S GOLD" CDのテキスト・データによると2曲目は"NAMELY YOU"という表示になる。
B"NAMELY YOU"
 同じく3曲目は"SILVER'S GOLD"になる。
C"ONE NOTE WALTZ" しっとりとした美しいテーマのワルツ。ピアノとベースのデュオと思わせるくらい池長のブラッシュは控えめだ。ここまで絞ることはなかったと思うが。
D"FALLING IN LOVE WITH LOVE" この曲から3曲、テキスト・データは次のように表示される。"WAIT LESS"。クラシカルなテーマ。
E"WAIT LESS"
 6曲目は"LEARNING TO TRUST IN LOVE"。テーマの曲想からいって後者のタイトルが正しいだろう。SEAGERの書いた曲で、美しいスロー・ロックのリズムに乗ってLOCKWOODの奏でるベース・ソロが素晴らしい。この演奏を聴けば、このLOCKWOODが引っ張りだこというのは頷ける。徐々に高潮していくその様が良い。
F"LEARNING TO TRUST IN LOVE"
 7曲目は"FALLING IN LOVE WITH LOVE"。これは有名なスタンダード・ナンバーなので僕にも分かる。間違いなく"FALLING IN LOVE WITH LOVE"である。軽快なブラッシュ・ワークと太いベース・ラインに乗ってシングル・トーンのピアノが歌う。スティックに持ち替えてからのシンバル・ワークとドラム・ソロも聴きものだ。
G"FREE PLAY"
 まさにタイトル通りのインター・プレイ。
H"NOCTANE" ここではSEAGERのアドリブは左手のバッキングが極めて少ない。右手一本、シングル・トーン勝負だ。
I"RE-INVENTING THE WHEELER" 印象に残るバーラード。このピアニストは一聴、地味であるが何回も聴いていると味わいが出てくる。最後にLOCKWOODがソロでビシッと締める。このベーシストはいい音を持っている。

最初にこのアルバムを聴いたときの印象は少し物足りないかなあと思っていた。しかし、1週間も続けて聴いているとじんわりとその良さが伝わってくる。大向こうを唸らせる華々しさやスリリングな展開はないが、そこはかとない優しさや渋さに包まれている。丁々発止のホットなプレイとは反対に、以心伝心のクールなプレイなのだ。
注目の池長のプレイはこのトリオの演奏に見事に溶け込んでいるので強烈な印象を残さない。これも可なり。
前掲のレビューでも書いたが、MAGNUS HJORTHが6月の25日から28日までの4日間、池長と組んで東京で4つのライヴを行うが、果たして、どんな演奏になるか本当に楽しみだ。   (2009.05.12)

試聴サイト : http://cdbaby.com/cd/bertseager4