CRAIG SCHNEIDER
美しさの押し売り
"TRIO//"
CRAIG SCHNEIDER(p), JONTY FISHER(b), DARRYN FARRUGIA(ds)
2006年6月 スタジオ録音 (CEEJAY'S MUSIC : CJCD001)


このCRAIG SCHNEIDERはオーストラリアのピアニストでヴォーカリストでもあるらしい。この人、地元オーストリアではエンターテイナーとして活躍していたようで、最もポピュラーなジャズ・プレイヤーとしての名声も得ていたようだ。
イギリスに飛んで、組んだのがこのトリオ。結構、サービス精神が豊富だ。この辺がこのピアニストの長所でもあり欠点でもあるような気がする。
エンターテイナーだけあってツボを押さえているというか、「うけ」を狙っているというか、兎に角、美しいメロディのオンパレードでリスナーを魅了しようとしている。しかし、過剰なサービス精神が逆に嫌味を誘ってしまうというジレンマに陥っていると僕はみる。
常に美しいフレーズばかり聴かされていると流石に飽きてしまう。要するに不協なフレーズがなくて、美旋律ばかり。不協和音があって初めて協和音が生きてくるのと一緒で、耳に心地よいフレーズばかりでは美しさが引き立ってこないと僕は思うのだ。このアルバムは「美しさの押し売り」みたいな印象を与えてしまうのだ。
かつて紹介したアルバムにALBORAN TRIO(JAZZ批評 377. & 486.)があったが、目指す音楽の方向は違っても、結果的にこのグループと良く似ている。
「過ぎたるは及ばざるが如し」だ。

@"WILDFLOWER" 
まるでシャンソンみたいな美メロで始まる。この曲はベーシストのFISHERが書いた曲だという。こういう美メロは必ずといっていいほど、どこかで一度は聞いたことがあるような曲だ。コロコロと転がるピアノは「待ってました!」と言わんばかり。
A"FAREWELL TO WINTER" 
これもどこかで聞いたことがあるようなワルツ。
B"PROMENADE BLUES" 
8ビートのブルース。グルーヴィではあるがスリリングではない。
C"AUTUMN FIRE" 
この曲もどこかで聞いたことがあるはずと誰もが思うだろう。
D"GRIFFIN AND SABINE" 
これでもかというほどの美メロ・オンパレード。あちらこちらの美メロ・フレーズを切り取って貼り合わせたような曲だ。
E"TELL ME WHY" 
どう弾いたらリスナーが喜ぶかを知りつつやってみたという感じ。そういう意味で、このピアニストはエンターテイナーと言えるだろう。ホテルのロビーとかバーとか、はたまた、最近ではラーメン屋なんかでもジャズが流れているが、そういう場面にピッタリかもしれない。ベースのFISHERのソロが用意されているが、太い音色でよく歌っている。このベーシスト、ほかのアルバムでもあればチェックしてみたい。
F"LITTLE LUCY" 
ベースのイントロで始まる明るく軽快な美メロ。
G"UNTITLED" 
ここまで美メロが続くと、これは逆に評価しても良いかも知れないという気になってくる。リリカルな美メロ・ファンには涙が零れるほどのアルバムかもしれない。実に手馴れた演奏だ。

全ての曲はピアノのSCHNEIDERとベースのFISHERの書いた曲だ。よくぞここまで美しい曲ばかりを集めたものだ。このレビューを書くために何回か繰り返し聴いたけど、1枚を通して聴くのは僕には辛かった。合間合間に違うアルバムを挟んでやっとここまで来た。
僕にとっては「美しさの押し売り」だけど、美メロ・ファンには垂涎の1枚かもしれない。美しさだけを取り上げれば、1級の美メロ・アルバムだと思う。   (2009.02.28)

試聴サイト : http://www.myspace.com/craigschneiderjazz



独断的JAZZ批評 540.