淡々と演奏しているが、
その奥に秘めた情熱を感じ取ることが出来る
レイ・ブライアントの代表作
RAY BRYANT TRIO
RAY BRYANT(p),IKE ISSACS(b),SPECS WRIGHT(ds), 1957年4月録音

先ず、選曲が素晴らしい。どの曲もテーマが美しい。レイ・ブライント作品の中で3本の指に入る傑作。

JAZZ批評 19. で紹介した1999年録音盤はブルース・フィーリング溢れる佳作だが、対してこれは180度違う歌モノばかりの選曲となっている。この頃のブライアントは、むしろ、メロディアスな演奏を披露している。

1曲目の "GOLDEN EARRINGS" 、2曲目の "ANGEL EYES"、5曲目の "DJANGO" と名曲が続く。合間に入るブライアントのオリジナル曲も美しい曲が揃った。
最近、ピアノ・トリオ人気ということも手伝ってか、歌モノ(スタンダード曲)をずらりと揃えて、いかにも日本人好みに仕上げた(日本盤)企画モノが跋扈するが、これらは何回か聴くと多分、いや、間違いなく飽きる。演奏に奥行きがないのだ。プレイヤーも安易にプロデューサーの意図に妥協している風が垣間見れるのだ。
どうも、この辺が僕には面白くない。

このブライアントのレコードは非常に真面目に作られている。作る側も、演奏する側も真剣だと感じさせるもので溢れている。
どの曲も、淡々と演奏しているが、その奥に秘めた情熱を感じ取ることが出来る。だから、大向こうを張ったり、コケオドシ的受け狙いのフレーズもない。じっくり、何回も味わえる傑作と言える。
3曲目の "BLUES BLUE" と4曲目 "SPLITTN'" はブライアントのオリジナルだが、とても良い曲。味がある。
MJQの十八番 であり、名曲でもある "DJANGO" では、テーマに続くアドリブで後世にみるブライアントの特徴のひとつである左手の使い方に現在の片鱗が見える。

何回聴いても聞き飽きることのないレイ・ブライアントの代表作といっても良いだろう。
(2001.12.20.)


RAY BRYANT

独断的JAZZ批評 41.