JOE KIENEMANN
一杯やりながら聴けば、これはこれで楽しませてくれるアルバムだと思う
"INTEGRATION"
JOE KIENEMANN(p), THOMAS STABENOW(b), ALDO CAVIGLIA(ds)
1991年1月 スタジオ録音 (YVP MUSIC : 3023 CD)

JOE KIENEMANNといえば、以前に"ALL THAT JAZZ"(JAZZ批評 194.)というアルバムを紹介しているが、録音年月日不詳で、曲によって録音レベルがまちまちだったりして、素性の知れないアルバムだった。今回のアルバムはメンバーも同じである。素性だけははっきりしていて1991年1月のミュンヘンでの録音だ。
ネット上の各ジャズ・ショップでは「限定200枚再発CD」とか「200枚の限定プレス」という触れ込みで書かれているけど、これは1店で200枚ではなくて、日本全国で200枚ということなのだろうか?それとも全世界で?日本中であろうと世界中であろうと大差はない。どっちに転んでも、レア盤でファン垂涎のアルバムもこの程度にしか売れないのだと、改めて、ため息が漏れてしまう。

@
"INTEGRATION" STABENOWの軽妙な定型パターンで始まるが、テーマの良さもあって心地よい4ビートを刻んでいく。前へ前へと突き進む推進力がいいね。KIENEMANNのピアノも洒脱だし、適度なグルーヴ感もあっていいね。元の定型パターンに戻って終わる。このアルバムの中のベスト。
A"BATIDA DIFERENTE" 
カリプソ風の妙に明るいテーマと軽いノリ。
B"DEIN IST MEIN GANZES HERZ" 
もう少し演奏に一体感があるといいけど、少しばらついている。STABENOWの長めのソロを経てテーマに戻る。
C
"SICILIETTE" 今度は愛らしいワルツ。演奏の中にヤマとなるべきクライマックスがあるともっとメリハリが効いてくるだろう。
D
"OPA PARDON !" 今度はブギウギ風スタイル。何でもやってみますって!
E"MY BAIAO" これも明るいテーマ。"MY ROMANCE"のハーモニーをベースにしているらしい。CAVIGLIAの長めのソロが用意されている。

F"GOSPELETTE" 
G"ALDISSIMO" ドラムスのCAVIGLIAが大きくフィーチャーされている短めの曲。
H"FROM BOP TO BOTTOM" 快いスイング感に満ちた4ビート。今度はSTABENOWのウォーキングがフィーチャーされている。。
I"ZWEI IN EINER GROSSEN STADT" 
まず曲がいいね。実にお洒落な曲で楽曲自体を楽しめる。ミディアムテンポの4ビートでサクサクと進む。
J"BEIDIRWARES IMMER SO SCHON" 
ボサノバタッチの軽いノリで楽しみたい。こういう曲は四の五の言わずに軽いノリを楽しもう。それが一番。
K"CONSIGO" @だけが別格で、それ以外は同じようなスタイル。あくまでも、軽いノリを楽しむ演奏である。

このKIENEMANNはオール・ラウンドなプレイヤーで何でも一通りこなせるようだ。オリジナルも
@をはじめ全8曲提供している。顔に似合わず明るいキャラクターのようだ。
MIKE PETRONEの"A LOT LIKE US"(JAZZ批評 496.)のところでも書いたが、こういうアルバムは希少価値のままでいたほうが所有している人にとっても、これから手に入れる人にとってもハッピーだろう。巷に溢れてしまえば、ごく普通のアルバムに成りかねない。
でも、損したとは思わない。軽いノリだと目くじら立てないで、一杯やりながら聴けば、これはこれで楽しませてくれるアルバムだと思う。   (2008.09.19)



独断的JAZZ批評 503.