何やら怪しげではある
それ故に、稀少盤なのであろうか?
"ALL THAT JAZZ"
JOE KIENEMANN(p), THOMAS STABENOW(b), ALDO CAVIGLIA(ds)
録音年不明(1988年?) スタジオ録音(MIRAMAR 09006-23059-2)

最近は仙台にあるDISKNOTEでCDをお世話いただくことが多くなった。出張があった時には、合間を見つけては寄ることにしている。社長も店長もその道の専門家であるから、実に痒いところに手が届いてくれる。「こういうピアノ・トリオが欲しい」といえば、「こんなのどう?」という具合だから、これは有難い。店頭に並んでいるCDをただ買うだけでは詰まらない。買う側、売る側のコミュニケーションが多くなれば、その分、楽しみも増えるというものだ。HPもリニューアルされて、カード決済も出来るようになり通販も買い易くなった。メールでやり取りしながら品定めできるのもジャズCD購入の楽しみのひとつだ。

で、このアルバム。DISKNOTE、お奨めの稀少盤。幸いに、Googleで検索したらmp3で試聴が出来た。各曲30秒足らずだが、お気に入りになるかどうかの見極めはつきやすいというものだ。注文した翌日には到着。いやはや、本当に便利になったものだ。
このアルバムは生産国アメリカでは既に廃盤となっているもので、国内の業者がアメリカの古倉庫を漁って発掘した1枚ということらしい。少数の入荷しかなかったらしいから、今となっては入手は難しいかも知れない。
このアルバムのライナーノーツには録音日が記されていない。ネットで調べてみたが、良くわからない。多分1988年頃ではないかとは推測はしてみるのだが・・・。

@"TOO COOL TO BE BLUE" 軽快なブラッシュ・ワークとともに切れの良いピアノが歌いだす。少し増幅が強すぎてベースの音がダボついているが、スティックが4ビートを刻むようになると一丸となった躍動感が溢れてくる。
A"OLHOS DE CRIANCA" ボサノバ調。
B"ICH BIN VON KOPF BIS FUSS AUF LIEBE EINGESTELLT" ワルツだが、ゴリゴリ弾いている。

C"JEAN FREDERIC" 哀愁を帯びたバラード。
D"ALICE IN WONDERLAND" 邦題「不思議の国のアリス」。このワルツもゴリゴリ弾いている。
E"FUN FAIR" ありきたりの8ビート。僕にとってはパス。
F"TOO MANY THINGS CALLED LOVE" ビシビシとしたシンバリングに乗ってピアノもご機嫌なプレイを披露している。
G"THERE IS NO GREATER LOVE" ベースの音がもっと硬く締まっていたらなあ・・・。あー、もったいない、もったいない。スティック・ワークとブラッシュ・ワークは良い音しているのに。

H"NUAGES" 何故かここからピアノの音もベースの音も以前と違う。締まった音がしている。???録音日、場所が違うのだろうか?
I"TRISTE" ANTONIO C. JOBIMのサンバ。
J"WAY DOWN TONDER IN NEW ORLEANS" 陽気な曲。

このトリオはドイツのグループらしい。ガッツと切れのある演奏だが、如何せん、ベースの増幅が強くてダボつき気味なのが気に入らない。これはベーシストの問題というよりも録音の問題だとは思うが。特に数日前にKEITH JARRETTのコンサートでGARY PEACOCKの硬く引き締まったビート感溢れるベースを聴いた直後だけにその印象を強くしてしまう。
そうかと思うと、録音レベルが変わったり、ピアノの音色ががらりと変わったりして、ちょっと素性の良くわからないアルバムだ。録音日とか演奏場所も判然としない。何やら怪しげではある。それ故に、稀少盤なのであろうか?
演奏自体は悪くはない。あれもこれもてんこ盛りの感は否めないが。   (2004.05.01)



JOE KIENEMANN

独断的JAZZ批評 194.