右手一本で PAUL CHAMBERS をも圧倒する
シングル・トーンの魅力
ジャケットからピアノの音がこぼれてきそうだ!
"SONNY CLARK"
SONNY CLARK(p), PAUL CHAMBERS(b), "PHILLY"JOE JONES(ds)
1957年スタジオ録音(BLUE NOTE BLP-1579)

TIME の名盤(1960年録音、JAZZ批評 40.)が SONNY CLARK のオリジナル曲集だったのに対して、この BLUE NOTE 盤はスタンダード曲集になっている。3年遡る1957年の録音。メンバーも PAUL CHAMBERS(b) と "PHILLY" JOE JONES(ds) という当時の最強サイドメンが連なった。しかしながら、彼らも霞んでしまうほど、 CLARK の独壇場となっている。

極めてシンプルに、しかも、シングルトーンで攻めつづけた36分間(レコードの完全復刻版)。左手のバッキング自体が極めて少ない上に、あったとしても、シングル・トーンや2〜3の和音。ブロックコードは僅かしか使わない。言ってみれば、右手一本で作った音楽だ。無駄を排し、シンプルさだけで立ち向かった。
現代の音符過剰なピアニストにも見習って欲しい演奏だ。音楽表現は音符の数じゃないと・・・・。

僕は4曲目以降の "TADD'S DELIGHT" や次の "SOFTLY AS IN THE MORNING SUNRISE" の演奏が好きだ。
"SOFTLY・・・・" では半分を過ぎたあたりからピアノが倍テン(倍速のテンポ)のフレーズを弾き始める。これに反応してドラムのブラッシュ・ワークが倍テンに移行していく。それでもベースは4ビートのままのリズムを刻む。このあたり、緊張感がありスリリングで面白い。

最後の "I'LL REMEMBER APRIL" の CLARK のピアノ・ソロもいい。ここでも、極めてシンプルに歌い上げている。派手さはないが心に染み入る演奏だ。こういう演奏は何年、いや、何十年経っても色褪せることがない。
ハード・バッパー SONNY CLARK の面目躍如といったところだ。

TIME盤と同様にジャケット・デザインも素晴らしい。ジャケットからピアノの音がこぼれてきそうだ。 

さて、TIME盤を選ぶか、BLUE NOTE盤を選ぶかは貴方のお好み次第。   
僕?勿論、両方買いだ。   (2002.07.19.)


@"BE-BOP" 
A"I DIDN'T KNOW WHAT TIME IT WAS" 
B"TWO BASS HIT" 
C"TADD'S DELIGHT" 
D"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 
E"I'LL REMEMBER APRIL" 
(2008.01.20追記)



SONNY CLARK

独断的JAZZ批評 83.