ATRO "WADE" MIKKOLA
テーマ演奏はサラッと行って、アドリブで個性を出すというのが望ましいと思うのだがどうだろう?
"POSEIDON RISING"
LASSE HIRVI(p), ATRO "WADE" MIKKOLA(b), TOMMI VAINIKAINEN(ds)
2001年11月 スタジオ録音 (AMK RECORDS AMK 1002)
リーダーのベーシスト、ATRO MIKKOLAは1956年のフィンランドで生まれというから、今年、51歳になるのだろう。フィンランドのジャズというのも珍しいが、こういう海外の果てからもジャズのアルバムが入手できるようになったのは有難いことだ。
ノルウェイとかスウェーデンとか、北欧3国のベーシストは比較的オーソドックスなスタイルの演奏をするプレイヤーが多い。スウェーデンのGEORG
RIEDEL、MATTIAS SVENSSON、ノルウェイのTERJE GEWELTなど隣国には売れっ子たちも多いが、フィンランドというとなかなか思い当たらない。
デンマークをその中に加えるといろいろなプレイヤーの名が浮かぶ。ピアノのCARSTEN
DAHL、KASPER VILLAUME、PETER ROSENDAL.。とくれば、ベースはJESPER LUNDGAARDにMADS
VINDING、JESPER BODILSEN、太鼓はALEX RIEL、MORTEN LUNDとなる。北欧の中でもデンマークのアルバムがもっとも多く日本に紹介されているし、実際、一番、活況を呈しているのではないだろうか?僕の夢としては、一度、デンマークのコペンハーゲン・ジャズ・ハウスに行ってライヴを聴いてみたいのだが・・・。
余談が過ぎたようだ、本題に戻ろう。先に紹介した北欧4国の中に、このATRO
MIKKOLAの名前も刻んでおこう。A、E、H、IがMIKKOLAのオリジナル。
@"DREAM DANCING" C.PORTERの曲。「さもありなん!」というC. PORTERらしい曲調だ。軽快な4ビートを刻んでいく。まあ、ゆっくりとしたくつろいだ気分でアルコールでも口にしながら、加えて、指でも鳴らせば、これは快いスイング感とともに「ハッピーだ」と思わせてくれるだろう。
A"SEVERE STEPS" MIKKOLAのオリジナル。太くて力強いMIKKORAのソロが堪能できる。
B"ROMANCE" 少し大げさなイントロで始まるが、テーマが終わるとアドリブは力強い4ビートを刻んでいく。これはいいね。この曲をはじめ、他にもテーマが叙情的や大袈裟な演奏に流されるという面がある。アドリブでは雰囲気をガラッと変えるスタイルが得意としているようだ。
C"A TASTE OF HONEY" ジャズのチューンとしては珍しい演奏だ。この演奏もアドリブからスタイルがガラッと変わり、4ビートを刻み出す。途中で"SO
WHAT"の2小節が入ったりして、遊び心もある。MIKKOLAはサイド・メンの二人に若手を起用しているようだが、二人とも切れがあってなかなかいいとは思うが、未だ十分と言えるほどの個性は発揮できていないかなあ。
D"MOONLIGHT IN VERMONT" この曲を聴くと30年前を思い出す。当時、WYNTON KELLYのBLUE NOTE・10インチ盤のB面にこの曲が入っていて、目覚まし時計代わりに毎朝、鳴らしたものだ。KELLYのピアノが高音で「キンコンカン!」と鳴って、目覚まし代わりとなったのだ!今となっては懐かしい思い出だ。
E"OPUS X" このアルバムとしてはハード・ドライブの演奏だが、しっくり感がもうひとつ。
F"FEELING GOOD / WAVE" 安定したアルコ弾きで始まる。音程の悪いアルコだけは聴きたくないが、これは大丈夫。A. C. JOBIMの"WAVE"へと続く。
G"MY OLD FLAME" これも少し大袈裟な演奏でスタートするが2分過ぎから高速4ビートのハード・ドライブに急変する。ベース・ソロを経てテーマに戻る。
H"OH NO !" これもテーマが大袈裟だなあ。もう少しさらっとやれればいいのに・・・。
I"POSEIDON RISING" タイトル曲でMIKKOLAのオリジナル。テーマとしてはあまり面白くない。短めの3分弱。
全体的な印象としてはテーマの演奏に拘りがあるようで、手を変え品を変えて、少々大袈裟風に迫ってくる。僕としては、テーマ以上にアドリブの妙を期待したかった。何故なら、ジャズの命はアドリブだと思うから。
テーマ演奏はサラッと行って、アドリブで個性を出すというのが望ましいと思うのだがどうだろう?勿論、テーマの重要性を否定するものではない。「いいテーマ(曲)に、いいアドリブ」というのは言うまでもなく、曲がよくなければ面白いアドリブも期待できないと思っている。
まあ、ごく普通に楽しめるアルバムだと思う。 (2007.01.26)