独断的JAZZ批評 388.

E. S. T.
期待が過ぎると落胆も大きい
"LIVE IN JAPAN 2007"
ESBJORN SVENSSON(p), DAN BERGLUND(b), MAGNUS OSTROM(ds)
2007年1月13日 渋谷・Bunkamuraオーチャードホールのライヴ

今日、E. S. T.のコンサートに行ってきた。昼のうちに、14年前のデビュー・アルバムのレビューを書いてから、期待に胸を膨らませて行ってきたのであるが、一口コメントの通りで酷くがっかりした。
今回のコンサート、言ってみれば"TUESDAY WONDERLAND"の焼き直しである。これほどまでにCDとそっくりさんで良いのだろうかと疑問に思うほど。これでは、コンサートに出かける意味が薄くなってしまう。ライヴならではの即興性を聴かせて欲しかった。

ほぼ定刻通りに演奏はスタートした。
最初の曲が"TUESDAY WONDERLAND"。この後、ほとんどの曲がアルバム"TUESDAY WONDERLAND"からのピックアップだ。正直に打ち明けると、僕は3〜4曲目辺りでは居眠りをしてしまったようだ。前半はBERGLUNDのアルコ弾き+エフェクターの演奏と単調なリズムが多くて、仕舞いには飽きてしまった。で、居眠りとなったようだ。確かに、CDを聴いた時は刺激的で一体どういう風に演奏しているのだろうかという疑問があったが、種を明かされてみると「な〜んだ」となってしまう。ギター風の音色は全てアルコのベースにエフェクターを咬ました音色のようだ。
で、僕の結論としては、このエフェクターなるものの必然性を感じなかった。むしろ、不必要では?と思ってしまったのだ。

20分の休憩を挟んで後半に突入。そんな状態だからこのまま終ってしまうのかと思っていた。会場の雰囲気も盛り上がらない。そんな中、"DOLORES IN A SHOESTAND"が始まると空気は一変。CDでもそうだったが、アドリブの途中から手拍子が入る。会場を巻き込んだ手拍子で大いに盛り上がり、SVENSSONも大いに乗りまくる。こうでなくちゃあジャズじゃないね。
今となっては記憶も不確かなのだが、この後、"WHERE WE USED TO LIVE"で幕を閉じる。
アンコールは1曲のみで"GOLDWRAP"だったと思う。

聴衆の反応は正直なもので、大きな盛り上がりは"DOLORES IN A SHOESTAND"の1曲のみだったように思う。アンコール要求の拍手も統一された手拍子とはならなかったし・・・。アンコールが1曲というのも寂しいね。それよりはサイン会を早くやってCDやポスターの売り上げ上げなくちゃあとスポンサーが考えたかどうかは知らない。

そんなわけで、僕は酷く落胆して帰ってきた。音の広がりやスケール感というのも特別感じなかったし、エフェクターなる電子コントロールを必要としたのか大いに疑問だった。むしろ、電気を使わない素の演奏のほうが余程、心に響いたのだが・・・。
前掲のE. S. T.のデビュー・アルバムを(JAZZ批評 378.)を書き上げたそのすぐ後に、このような結末が待っていようとは思いもよらなかった。意外な結果だ。だから、面白いとも言えるのかも・・・。   (2007.01.13)