独断的JAZZ批評 383.

ERIK VAN DER LUIJT
饒舌で切れのある右手と寡黙で単調な左手のバランスも良しとしない
"JOYRIDE"
ERIK VAN DER LUIJT(p), BRANKO TEUWEN(b), VICTOR DE BOO(ds)
2006年5月 スタジオ録音 (自主制作盤)

前作の"EXPRESS YOURSELF"は「これがジャズのアルバム?」と思ってパスした記憶がある
漫画チックなジャケットからはどんな音楽が流れ出てくるのだろうか?
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正直に言って、この漫画チックなジャケットには抵抗感がある。このジャケットからいいジャズの音が聞こえてこないのだ。あったとしても、ロック紛いのジャズかなあと思ってしまう。
前作"EXPRESS YOURSELF"はヒステリックで(車の中で子供が癇の虫を起こしている)漫画チックなジャケットだったけど、このジャケットはヒステリックでない分、まだ良いか。
そんな想いを抱きながらトレイにディスクを載せてみた。

@"BOOGALOO TO YOU TOO" 退屈な8ビートだ。パス。この曲が最初に入ったことによって物凄く損していると思うなあ。20〜30年前の演奏スタイルだ。
A"ADRIE & RIA" ちょっと曲想がJACO PASTORIUSの"THREE VIEWS OF A SECRET"に似ているワルツ。退屈な左手だ。リズム陣との噛み合せももうひとつ良くない。
B"BOO" いきなり高速の4ビートをリズム陣が刻んでいく。このピアニスト、右手は饒舌で達者だ。しかし、左手が退屈だ。これはこのチューンに限ったことではなくて、全編で言えることだ。演奏も粗い。引き摺られるようにリズム陣も粗い。演奏に緊密感や一体感がないので、演奏が躍動してい来ない。
C"EVOLUTION" 大層なタイトルがついているけど、スローテンポの曲の割りに演奏も大仰だ。 
D"ANOMALY" 
E"SOMERSET SERENADE" 可憐なワルツ。ついつい、いつの間にか指を鳴らしているような躍動感があればいいのだが。

F"JOYRIDE" テーマとは裏腹にアドリブではベースが急速調の4ビートを刻む。よくしゃべる(動く)ピアノの右手だ。対して、左手は寡黙だ。若いピアニストなのだろうか?3人が一丸となって躍動するような一体感が希薄なのが残念。勢いだけで突っ走ったという感じ。最後はフェードアウトしてしまうが、これも嬉しくない。
最後まできっちりと決めて欲しい。
G"BRANIMIR" 
H"PERPETUUM MOBILE" 

実は、このCDはHMVのネット・ショッピングで購入した。しかしである!
HMVのショッピング・ページに載っているアルバムと購入したアルバムでは内容が違うのである。演奏曲目と曲数に違いがあるのはどうして?それとも2バージョン発売になっているのだろうか?それとも、HMVの単なる記載ミス?真相は分からないが、僕は購入したアルバムをベースにレビューを記載した。因みに、HMVのショッピング・ページに載っている内容は曲数が全11曲で"PASSION"、"PARIS"、"GODSPELL"が入っている代わりにEの"SOMERSET SERENADE"が抜け落ちている。曲順も違っている。

いろんなことがあったが、このアルバムの印象としては部分部分ではそんなに悪くはないのだけど、何故か心に響かない。何故だろうと首を捻るのであるが、思いつくことといえば、ピアノのワンマン・スタイルが気になることだ。それと、饒舌で切れのある右手に比べ、左手が寡黙で単調なので音の奥行きというか広がりがない事くらいだろうか。このくらいだと、やはり、自主制作になってしまうのかなあ?!   (2006.12.24)