独断的JAZZ批評 374.

GENE DINOVI
好々爺のスインギーで優しさの溢れるピアノ・トリオ
"FLOWER OF THE NIGHT"
GENE DINOVI(p), NEIL SWAINSON(b), JOE LABARBERA(ds)
2004年10月 神奈川公会堂録音 (MARSHMALLOW RECORDS MMEX-110)

MARSHMALLOW レーベルの新譜、2枚目
カナダ在住のベテラン・ピアニスト、GENE DINOVIのアルバム
初登場
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このGENE DINOVIは2006年の今年、78歳になるという。「超」がつくベテランといって良いだろう。ジャズの世界にあっては40、50歳は洟垂れ小僧の域だから、78歳といっても驚くことはない。現役バリバリで録音時の2004年は5度目の来日だったという。
演奏の印象としては「好々爺のスインギーなピアノ」という感じかな。それが良さでもあり、物足りなさでもある。
録音場所は「神奈川公会堂」とあるが、ライヴではないようだ。聴衆の拍手などが全くないので、録音のために設定された場所かもしれない。如何にも無人の公会堂で録音されたという感じでドラムスの反響音が大きい。

@"AKARENGA BLUES" 初来日以来、14年目にして始めて録音したブルースだという。横浜の赤レンガに因んだ曲のようだ。ブルース・フィーリングたっぷりと聴かせてくれる。
A"CANADIAN SUNSET" お馴染みのスタンダード。KENNY BARRONの名演があるので紹介しておこう。"LIVE AT BRADLEY'S"(JAZZ批評 22.
B"DAY IN DAY OUT" ミディアム・テンポで気持ちよくスイング。どの曲想も明るくカラッとしている。
C"FLOWER OF THE NIGHT" 「月下美人」。日本的な曲想が印象的。
D"IT'S YOU OR NO ONE" 軽快な4ビートに乗ってピアノが跳ねるが緊密感とか一体感がもう一歩。少し、がさついた感じだ。この曲はJULE STYNEの書いた名曲だが、機会があれば是非、JOHN HARRISON Vの"ROMAN SUN"(JAZZ批評 167.)の演奏を聴いてみて欲しい。アグレッシブな躍動感が堪能できるはず。

E"MIKI" オリジナルの美しいワルツ。MARSHMALLOWの主宰者である上不氏の娘さんに捧げた曲だという。SWAINSONのベースも良く歌っている。このベーシスト、決して派手ではないが良く歌って好感の持てるプレイヤーだ。
F"ONCE UPON A TIME" DINOVIのお気に入りの曲だという。美しいバラード演奏。
G"TROLLEY SONG" 
H"TWO FOR THE ROAD" HENRY MANCINIの書いた、これまた美しいテーマのバラード。
I"VERONICA" ライーナー・ノーツによればこの曲はカナダでは誰一人知らぬ人はいないというバレリーナ・VERONICAに捧げた曲だという。

全編を通して、その人柄を偲ばせる美しい曲と、優しさと温かみのある演奏に終始している。まさに「好々爺のスインギーで優しさの溢れるピアノ・トリオ」という感じではある。
毒気や灰汁の部分は皆無で、真面目な人柄をも感じさせる演奏だ。逆に、そのことが聴く人を選ぶかもしれない。かく言う僕には少し物足りない気がするのであるが・・・。   (2006.11.03)