独断的JAZZ批評 362.




NICK WELDON
このアルバムは何の脈絡もない録音をいくつか拾い集めてひとつのアルバムにしたとしか思えない
"LAVENDER'S BLUE"
NICK WELDON(p), ANDREW CLEYNDERT(b), PAUL CLARVIS(ds)
TIM GARLAND(ss:D, ts:H), CHRISTINE TOBIN(vocal:H)
1994年秋 スタジオ録音 (VERGE 001CD)

ピアノ・トリオがメインであるが、ソプラノサックスと女性ヴォーカルが参加したチューンがある
HAMPTON HAWESの書いた名曲"SONORA"がお目当て
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このCDを1週間聴いてきて腑に落ちないことがある。とてもひとつのアルバムとして完成された作品に思えないのだ。寄せ集めという印象を持ってしまう。ジャケットを良く調べてみたら録音年月日が"Autumn 1994"と書いてある。果たして!さもありなんと思った。
ある意味、統一感がないし、「何で?」と思わせる違和感がある。その最たる演奏がソプラノ・サックスが参加したDと女性ヴォーカルとテナー・サックスの参加したH。
この2曲は無理に押し込んだ気がして、むしろ、はじめからない方が良かった。

@"MABS AND TUCKER" 
ブルース・フィーリング溢れる演奏だがブルースではない。
A"SONORA" 
HAMPTON HAWESの書いた名曲。本当にいいテーマだ。ここでWELDONは音数が少ないながらも心に沁みるいい演奏を披露している。この曲の演奏がお目当てでこのCDを購入したが、期待に違わぬ演奏であった。
因みに、この演奏はHELGE LIEN "TO THE LITTLE RADIO"(JAZZ批評 342.)でも聴くことが出来る。もし両者を比較すれば、圧倒的な差でLIENに軍配を上げざるを得ない。この演奏が劣っているというよりは、LIENの演奏が素晴らし過ぎると言っても良いだろう。

B"IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING" 
@からこのBまでは普通に楽しめるのではないだろうか。
C"ALONE TOGETHER" 

D"LIFFEY" 
忽然と現れたソプラノサックスの演奏に唖然、呆然、愕然。それまでの演奏と180度違う曲想に????。このチープなソプラノ・サックスの音色にもがっかり。悪いことに7分以上も長広舌で演られた日には、2度と聴くまいと思ってしまう。
E"NEVER LET ME GO" 
多分、この曲の演奏もAとかBの時とは録音の日時が違うのではないだろうか?ベースの音量、ドラムスの荒っぽさが他とは違うのだ。特に、このドラムスは素人並みで聴けたモンじゃあない。
F"SOME OTHER TIME" 
G"SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE" 
Eと同様、荒っぽいドラミングが堪能できる?!
H"LAVENDER'S BLUE" 
語り風の女性ヴォーカルが参加。これが、また、鬱陶しいのだ。これも悪いことに、同じフレーズが何回も何回も続くのだ。「もう勘弁ね!」と言って、僕はこの曲を飛ばす。

先にも書いたように、このアルバムは何の脈絡もない録音をいくつか拾い集めてひとつのアルバムにしたとしか思えない。こういうアルバムは全てを聴こうと思わないことだ。気に入った曲だけ他のメディアに録音して聴いた方がすっきりする。
安直なアルバム作りとしか言いようのないアルバムで、AやBの味のある演奏がぶっ飛んでしまった。   (2006.09.09)