ゆったりとした大人の時間を満喫するという、そういう感じ
"DUETS"
REIN DE GRAAFF(p), CHARLES MCPHERSON(as), MARIUS BEETS(b),
1999年2月 スタジオ録音 (TIMELESS CD SJP451)

このREIN DE GRAAFFはオランダのピアニストだという。オランダのピアニストと言えばPETER BEETS やJURAJ STANIKがすぐ思いつくが、両者ともヨーロッパの中にあって自分のスタイルとバップ・フィーリングを持ち合わせた好印象のピアニストという感が強い。

最初に、このアルバムを聴いたときには「少しインパクトに欠けるかなあ」と思っていた。事実、ハードタッチやノリノリの演奏というスタイルではない。むしろ静かに熱く歌うタイプである。何回も聴き返しているうちにこの良さがジンワリと分かってくる。派手さもコケオドシもない、真面目で真摯な演奏スタイルに好感が持てる。リラックスした夜にでもワインでもウィスキーでも日本酒でもいい、グラス片手にじっくり味わって欲しいスタンダード曲集だ。


タイトルにあるようにHを除いた9曲がデュエットの演奏スタイルをとっている。
@、D、Gがベース・MARIUS BEETSとのデュオ、A、B、C、E、F、Iがアルト・サックスのCHARLES MCPHERSONとのデュオとなっている。ベースのMARIUS BEETS前述のピアニストとの競演(JAZZ批評 170. & 182.)で素晴らしいベース・ワークを聴かせている。
アルト・サックスのMCPHERSONはナチュラルでありながら、切なく、渋い演奏を聴かせてくれる。

@"WHAT IS THIS THING CALLED LOVE ?" ベースとのデュオ。MARIUSのベースはビート感もあるし良く歌っている。ピアノのGRAAFFも良くスクィングしている。ドラムスを必要と感じさせないドライブ感。

A"THESE FOOLISH THINGS" アルト・サックスとのデュオ。アルトの音が聴こえるその瞬間、ゾクゾクとさせる何かが走る。
B"I REMEMBER YOU" 最近、この曲を演奏するプレイヤーが多い。ドラムスがない分は貴方の指を鳴らす音で補えば、更に、楽しさが湧き上がる。
C"DARN THAT DREAM" MCPHERSONのアルトが切なく歌う。虚飾を排したナチュラルなアドリブに好感が持てる。

D"JUST FRIENDS" MARIUS BEETSというベーシストは派手さはないが堅実でよく歌うベーシストで安心感がある。ベーシストにとって、ピアニストからこういう評価を得ることはとても大事なことだ。
E"PINEHILL BLUES" MCPHERSON、ブルースを大いに歌う。

F"HOW DEEP IS THE OCEAN"
 
G"I'LL REMEMBER APRIL" ミディアム・テンポのベースに乗って軽快にスウィング。
H"MY MELANCHOLY BABY" ピアノ・ソロ。
I"STAR EYES" 
 
REIN DE GRAAFFはジャケットに写っている写真のように、背筋をしかっりと伸ばしてピアノを弾く人のようだ。その人の人柄が表れていると感じさせるジャケットに納得がいく。
ところで、試しに、部屋の照明を少し落とし、グラス片手にこのCDを聴いてみた。
これはいいね。
ゆったりとした大人の時間を満喫するという、そういう感じ。   (2004.04.02)



REIN DE GRAAFF

独断的JAZZ批評 189.