GIOVANNI MIRABASSI
MIRABASSIが"BLUE TRAIN"や"STRAIGHT NO CHASER"みたいなグルーヴ感溢れるブルースをもし弾く機会があるとするならば、一体どういう演奏をするのだろうか?
"PRIMA O POI"
GIOVANNI MIRABASSI(p), GILDAS BOCLE(b), LOUIS MOUTIN(ds), FLAVIO BOLTRO(tp,flh)
2005年5月 スタジオ録音 (SAWANO ATELIER AS 053)


GIOVANNI MIRABASSIのアルバムをこのJAZZ批評で紹介するのは何枚目になるだろうか。(数えてみたら6枚目だった)最初に聴いたのがピアノの話題作"AVANTI !"(JAZZ批評 60.)だった。以降、澤野工房から発売されるアルバムは大体チェックしてきた。今回はピアノ・トリオにホーンを加えたカルテットの演奏が3曲ほど配置されている。
MIRABASSIと言えば"MIRABASSI WORLD"とも言うべき、誰にも真似の出来ない独自の音楽世界を作り上げている。哀愁というのとも違う、切なくて美しくそして力強い情念のこもった世界だ。今回は前回のアルバム、"AIR"(JAZZ批評 164.)で競演したトランペットのFLAVIO BOLTROを迎えて
3曲で競演している。"AIR"はベース、ドラムスのリズムセクションがなくて、トロンボーンを加えたトリオ演奏だった。(tp)、(tb)、(p)という編成にかかわらず躍動感の充溢したアルバムだった。MIRABASSIの実力を見せ付けたアルバムとも言える。
さて、このアルバムであるが、今までのアルバム同様に孤高の"MIRABASSI WORLD"を堪能出来るアルバムと言うことが出来るだろう。
             

@"BARCAROLE" このベースは初めて聴く名前だが、なかなかアルコが上手い。相当クラッシクの訓練を積んできたのではないだろうか?一方、ドラムスは一貫してLOUIS MOUTINだ。
A"ERO IO" いかにもMIRABASSIが書きそうな曲。切なく美しく情念のこもる曲想。
B"SYMPHOMANIAX" ピアノトリオにBOLTROのトランペットが加わる。
C"GETTIN' IN・・・"
 
D"THEME FROM HOWL'S MOVING CASTLE" 久石 譲の手になる「ハウルの動く城のテーマ」。僕はこのアニメを未だ見ていないが、テーマが良い。その素性が分かるというものだ。大胆にも逸早くこういう曲をラインナップに加え、なおかつ、それをジャズ・ワルツとして昇華してしまうところが凄い。このベーシストはピチカートでも良いね。

E"LLORO"
 珍しく陽気で軽快な曲だ。最後のテーマでは徐々にテンポ・ダウンして終わる。
F"L'INGENERE" ここではトランペットのミュート演奏が加わる。繊細なミュート音にMIRABASSIのピアノが絶妙に絡むワルツ。物憂げで切ない演奏だが、しっかりと躍動感がある。良いねえ!
G"TOT OU TARD"
 MOUTINのドラムスが思いの丈を披露する。そしてクライマックスへ・・・。
H"MINOR VOYAGE"
 ここではBOCLEのアルコ弾きが堪能できる。このアルコは凄い!これほどにアルコでも躍動感を失わないジャズ・ベーシストはそうそういるものではない。そして、MIRABASSIの粒立ちのはっきりしたピアノも思う存分に歌っている。
I"IL BANDOLERO STANCO" 今度はBOLTROがフリューゲルホン(?)を手にしてしっとりとしたテーマを奏でる。

(J"SYMPHOMANIAX" これはBのビデオ・クリップ版につき通常の音楽ソースでは聴くことが出来ない。PC上のQuickTimeで見ることが出来る。イメージ映像であるが、ここまで必要かは疑問の残るところだが、敢えて、価格を高く設定していないので良しとしよう。)

GIOVANNI MIRABASSIを世に知らしめた澤野工房の功績は大きいものがある。今や、イタリアを代表する、いや、ヨーロッパを代表するジャズ・ピアニストと言うことができるだろう。
余談だが、このMIRABASSIとKENNY BARRONが同時に味わえるコンサートが澤野工房の主催で近々(12月初旬)予定されている。これは楽しみだ。MIRABASSIカルテットの来日メンバーはこのアルバムと全く一緒。
BARRONはベーシスト、北川 潔(JAZZ批評 225.)のメンバーの一員として参加するわけだが、ヨーロッパの雄、MIRABASSIとアメリカの雄、BARRONが同時に堪能できるというのは嬉しい企画だ。
MIRABASSIが"BLUE TRAIN"や"STRAIGHT NO CHASER"みたいなグルーヴ感溢れるブルースをもし弾く機会があるとするならば、一体どういう演奏をするのだろうか?と僕はいつも想像を逞しくしている。もし、そんな場面があれば、これは面白いと思うのだが・・・。
「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2005.11.24)



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独断的JAZZ批評 307.