AKIKO GRACE
だから、ひとつの過程だと思いたい
そのうち、原点に戻るだろう
戻って欲しい!
"FROM OSLO"
AKIKO GRACE(p), LARRY GRENADIER(b), JON CHRISTENSEN(ds)
2004年9月 スタジオ録音 (SAVOY COCB-53265)

AKIKO GRACEといえばJAZZ批評 101.と 144.のアルバムが印象的であった。いずれも甲乙点け難い力作であった。いわば「男勝りで、(頭もピアノも)切れる豪腕女性ピアニスト」というイメージがあった。この2作を試聴したときはぶっ飛んだものだった。
このイメージが強烈で、その次に出したTOKYO"というアルバムはジャケット・デザインを見て心底がっかりしたものだ。「妖艶な怪しさ」をイメージしたジャケットを見ただけで購入意欲が萎えてしまった。然るに、試聴してもそういう先入観念があるために全然良いと思わなかった。勿論、購入もしなかった。そして、今回のアルバムである。今度のイメージは北欧の「清らかなメルヘンチックな」イメージなのか!?これも僕は「怪しい」と感じていたが、とりあえず、試聴もせずに購入してみた。

レコード会社としてはひとつのイメージに固まるよりはAKIKO GRACEの色々な多面性を見せて新たな顧客を開拓したいと思うのだろうけど、冒頭のイメージを持った僕には何とも不服なのだ。僕のイメージとしてはAKIKO GRACE のイメージはあくまでも「切れる女」なのだ。そして、今後も「切れる女」でいて欲しいのだ。あの今をときめくLARRY GRENADIERやBILL STEWARTを向こうに回してガンガン弾きまくるAKIKOにこそ、その持ち味があるのではないか。

@"NEW MOON" 
A"SUNRISE" @にリンクした曲想。
B"WALTZ FOR DEBBY" ウ〜ン!お馴染みの曲もストレートには演奏しなかった。
C"FROM OSLO" 
D"MILES' DANCE" このアルバムのベスト。跳躍するピアノが聴ける。ドラムスに難があるが・・・。
E"ORGANIC FORMS" 
F"PEACE, SEARCHING FOR" 
G"GOLDEN EARRINGS" ドラムスが邪魔!
H"NORWEGIAN WOOD" 
I"PLAY, PRAY IN THUNDER" 
J"SOLVEIG'S SONG" 哀しい曲。僕も悲しい。
K"GROOVE IT IS" 
L"ON THE RAINBOW" 
M"MESSAGE" 

全編を通して感じるのは強烈な躍動感や前へ前へと突き進むドライブ感が希薄なこと。非難を承知で敢えて言えば「これはAKIKO本来の音楽ではない」 こういう一面もあるということだけに止めたい。
トリオとしてみた場合にも前述の2作で共演したドラムスのBILL STEWARTの時とはグループの一体感が違う。メンバーが替わればある程度起こり得ることとしても、JON CHRISTENSENのドラムスには気負いがみられ、不自然な違和感を感じてしまう。
ヒット作が2枚も続くと、そろそろ趣向の変わったアルバムをとレコード会社も思うのだろう。このパターンは本当に良くある。多分、ピアニストも己の新たなる世界を模索して挑戦をするのだろう。
だから、ひとつの過程だと思いたい。そのうち、原点に戻るだろう。戻って欲しい!   (2004.12.08)



独断的JAZZ批評 234.