ANTHONY WONSEY
まあまあという評価では満足できないのもリスナーの心理だと思う
"BLUES FOR HIROSHI"
ANTHONY WONSEY(p), RICHIE GOODS(b), TONY REEDUS(s)
2004年2月 スタジオ録音 (SHARP NINE RECORDS CD 1030-2)
ANHONY WONSEY、初めて聴くピアニストだ。最近は輸入盤が容易に手に入るようになった。ネットでの購入も出来るし、専門サイトもある。居ながらにしてゲットすることも簡単だ。ただ、ネットで探し出して試聴できる割合はそれほど多くないのが現状だ。それと、試聴サイトは音楽ファイルを圧縮しているので音質が必ずしも良いとは言えない。時間も30秒〜1分と短いのが残念だ。
こうしたジャズ・サイトで最近良くピックアップされているのがこのアルバムだ。ハード・バップの流れを継承したピアノ・トリオだ。クリアな音色、ストレート・アヘッドな演奏が全編にみなぎる。派手さはないが、繰り返し聴いているうちにジンワリとそこはかとない哀愁を感じさせるが、その一方で、少し物足りなさも残るアルバムだ。ベース、ドラムスの組み合わせもまあまあだ。
@"DAMN THAT REALITY" すっきりとしたピアノの音色にアーシーなフィーリング。この辺がこのピアニストの持ち味かな。
A"WALTZ FOR DEBBY" 言わずと知れたBILL EVANSの名曲。今まで何百、何千のピアニストたちが取り上げてきただろう。EVANSの名演があるだけにプロとしてはやり辛いだろうけど、ここは、自分のスタイルに拘った。ミディアム・ファーストの軽快でアグレッシブな演奏。これは正解だ。
B"BROTHER HIROSHI"
C"JUST IN TIME" JAZZ批評 113.の山中千尋のトリオでも演奏されている佳曲。比較してみるのも面白い。ウ〜ン、残念だけど、山中千尋の演奏の方がドライブ感と高揚感があって断然良い。
D"THE PEACOCKS" 哀愁溢れるバラード。
E"JUST YOU, JUST ME" 小気味のいいピアノのタッチに思わず指が鳴る。軽快なスティック・ワークもベース・ワークもいい。個々の一つ一つのプレイのレベルは高いと思うのだけど、集積された音楽に斬新さや胸を打つような「熱っぽさ」がない。バック・グランド・ミュージックで終わってしまっては、プレイヤーも面白くないだろう。
F"BLACK FAIRY TALES" WONSEYのオリジナル・バラードらしいけど、どこかで聞いたような曲だ。そうだ、部分部分で"WALTZ
FOR DEBBY"に似ているのだ。
G"NOBODY ELSE BUT ME"
H"RELAXIN' AT CAMARILLO" C.PAKERの書いたブルース。
悪いアルバムだとは思わないけど、何か物足りなさが残る。このクラスのピアニストは五万といるし、個性でピカリと光るものがないとそのうち忘れ去られてしまうだろう。
リスナーは貪欲で、より良い音楽を聴きたいと思うものだ。まあまあという評価では満足できないのもリスナーの心理だと思う。 (2004.09.26)