全てをぶち壊しにしたエレキ・ピアノと思いません??
"DETAILS"
DAVID KIKOSKI(p), LARRY GRENADIER(b), BILL STEWART(ds)
2003年12月 スタジオ録音 (CRISS CROSS JAZZ 1249 CD)
 

CDを購入するときは、基本的に、自分の耳で確認してから購入することにしている。音楽は感性のものだし、一人一人その捉え方は違って当然だと思っている。実は、ここに、僕が「独断的」と断ってレビューを書いている理由がある。
それと、少ないコストで良いアルバムにめぐり合いたいと思うからだ。良いアルバムに出会える確率を上げるには自分の耳で確かめるというのが、一番確実な方法だろう。購入に際しては、いつも4.5星以上のアルバムを目指して購入している。結果的に4星以下だと、いつも無念さが残ってしまう。試聴方法は店頭で聴くのも良いが、これは大概、新譜に偏っている。ネットで聴くことも可能だ。気の利いたレコード会社は試聴できるようになっているし、HMVのような大手のショップでも、ものによっては聴くことが出来る。

で、このアルバムであるが、これは全く試聴しないで購入した。その理由は、リズム陣のメンバー。このリズム陣で悪かろうはずがないと思った。
ベースにLARRY GRENADIER。ピアノ・トリオではこのベーシストが参加すると☆1ヶ分はアップすること間違い無しだ。だから、最近はあちこちで引張り凧だ。強靭なピチカートから生まれるビート感は、一昔前のRICHARD DAVIS(JAZZ批評 44.)を彷彿とさせる。
ドラムスにBILL STEWART。良く歌うドラマーで、テクニックといい、イマジネーションの豊かさといい、21世紀をリードするドラマーだ。この二人が絡めば、「鬼に金棒」だろう。
そして、ピアノにDAVID KIKOSKI。初めて購入するアルバムだ。今までも、購入のチャンスは何回かあった。試聴するたびに、「パス!」と思っていた。購入しても4.5星以上はつけれないと思ったからだ。尤も、試聴するといっても全曲確認するわけでもないし数曲のさわりだけを聴くわけだから、試聴したからといって必ず良いアルバムに当たるとは限らない。また、その逆もあるわけだ。

@"IN YOUR OWN SWEET WAY" 
D. BRUBECKの曲。故かGRENADIERの出来が良くない。ピアノとのアンサンブルももうひとつだ
A"DETACHMENT" @とB以外は全てKIKOSKIのオリジナル。アップテンポの4ビートになったり、変拍子になったりで、どうもおさまりが悪い。
B"7/4 BALLAD" 
これもテーマが詰まらない。7/4の変拍子。こういう変拍子というのは生理的な快感を伴わない。

C"INNER URGE" J. HENDERSONの曲。
D"JURIKI" 
エレキ・ピアノ。何故、エレキを使うのか全く理解できない!無機質で抑揚のない楽器を使う、そのわけは?でも、STEWARTのドラミングが素晴らしい。
E"ADORABLE YOU" 

F"K'S BLUES" 
この曲もエレキ。素晴らしいスティック・ワークと力強いベースのウォーキングの上を、何とも無粋なエレキ・ピアノが粘りつく。ああ〜っ、もったいない。折角の好演も台無しだ。もしも、これがアコースティック・ピアノなら、もの凄い演奏になっっていたに違いない。全てをぶち壊しにしたエレキ・ピアノと思いません??何の為に、エレキを使ったのか、僕には全く理解できない!
G"PRESAGE" 
H"TAG BLUES" 
ミディアム・テンポのご機嫌なブルース。最後の最後に「らしさ」が出たかな。

このアルバム、KIKOSKIの手になるオリジナルのテーマがどれも面白くない。さらに、素晴らしいリズム陣を従えてはいるのだが、3者のアンサンブルが決して良いとは言えない。 KIKOSKIのピアノが上滑りしているような印象を持ってしまう。従い、一体感と緊密感に欠ける。
アンサンブルという点では、エレキを使ったDとFが秀逸であるが、全てをエレキ・ピアノがぶち壊してくれました!返す返すももったいない。   (2004.06.26)


 
DAVID KIKOSKI

独断的JAZZ批評 205.