EVANSの「名盤」のひとつに数えられるアルバムとは思えない
"AT THE MONTREUX JAZZ FESTIVAL"
BILL EVANS(p), EDDIE GOMEZ(b), JACK DeJOHNETTE(ds)
1968年6月 ライヴ録音 (VERVE 314 539 758-2)

1961年にBILL EVANSが盟友、SCOTT LAFARO(b)を交通事故で失い、その幻影を追い求めてメンバーに選んだとされるEDDIE GOMEZの参加を得た1968年のMONTREUX JAZZ FESTIVALでのライヴ録音。ドラムスには今やKIETH JARRETTのトリオには欠かすことの出来ないJACK DeJOHNETTEが参加している。
これ以降、EDDIE GOMEZというベーシストは大いに脚光を浴びることになるのだが、EVANSにとってこのベーシストの選択は「吉」と出たのか、大いに疑問だ。勿論、このアルバムがEVANSを語る上で重要なポジションを占めることに異を唱えないが、アルバムとしての魅力という点で疑問符が付く。世間では「名盤」とされているようだが・・・。

最大の弱点はEDDIE GOMEZのベースにある。ギターのようにベースを弾くという離れ業を演っているが、それはテクニックが凄いという事だけで、感動を呼ぶものでない。こういう音符過剰の演奏の方が誤魔化しも効くし、コケオドシも効く。僕には、このベース・ソロが面白いとはとても思えないのだ。

@"SPORKEN INTRODUCTION" 
A"ONE FOR HELEN" 
B"A SLEEPIN' BEE" 
C"MOTHER OF EARL" 
D"NARDIS" ドシャドシャとしたJACK DeJOHNETTEのドラム・ソロも聴けるが、何故かとても荒っぽい。DeJOHNETTE、その人とは思えない。GOMEZの影響を受けたかのように3人が3人とも荒っぽい演奏で一体感を感じない。

E"QUIET NOW" ピアノ・ソロ。何とも切ないが、きちんと躍動感に満ちている。
F"I LOVE YOU,PORGY" これもピアノ・ソロ。EとFの2曲のソロ・ピアノは良いな。明らかに、質の高さでトリオ演奏を上回っている。

G"THE TOUCH OF YOUR LIPS" 
H"EMBRACEABLE YOU" ベース・ソロで始まるがこの演奏が独りよがり。速弾きの連発。美しさがないからテクニック講座を聴いているよう。これを延々とやるものだから、しまいには「いい加減にしてくれと!」言いたくなる。
I"SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" おなじみの定番曲。ベースの「トゥルルルル、トゥルルルル」のオンパレード。相当、鼻に付くね。ベースとドラムスのコンビネーションも今ひとつ。
J"WALKIN' UP" 同じようなべース・ソロばかり。「いい加減にしてくれ!」
 
こういうGOMEZの速弾きを聴いていると先に紹介したBREND HEITZLER(JAZZ批評 179.)のシングル・トーンの"GEORGIA ON MY MIND"が聴きたくなってくる。実際、この後、久しぶりに聴いてみたけど、これは良い!正々堂々のベース・ソロ!ベース本来の音!

翻って、このアルバム。ピアノ、ベース、ドラムスの一体感も希薄だ。ベースばかりが突出していてバランスが悪い。
DeJOHNETTEだって、近年の活躍ぶりから見ると首を捻りたくなる。豪胆にしてセンシティブなドラミングが影を潜めている。もっとも、今から35年以上前の演奏だし、これは単純な比較は出来ない。
ピアノ・トリオという視点でみて、僕にはEVANSの「名盤」のひとつに数えられるアルバムとは思えないのだ。   (2004.03.28)



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BILL EVANS

独断的JAZZ批評 188.