これはライヴというその一瞬を切り取った音楽にも拘わらず、繰り返し何回も聴けてしまう不幸と言っても良いかも知れない
CDという録音再生機によって陥る罠といっても良いだろう
"STANDARDS IN CAGLIARI"
DON FRIEDMAN(p), JEFF FULLER(b), TOMMY BRADASCIO(ds)
1999年 ライヴ録音 (SOUL NOTE 121377-2)

DON FRIEDMANというピアニストは昔から過小評価されている嫌いがあった。あたかもBILL EVANSのコピーのように言われていたが、最近やっと見直す風潮が出てきて本当に良かった。年取るごとに、若さとそのバイタリティを得たかのように、活きの良い演奏を聴けるのは嬉しい限りだ。若い頃よりも最近の演奏の方がハード・バップを意識させる力強さが漲っている。
FRIEDMANのアルバムについては今までに6枚ほど紹介している。このアルバムとは後先になるが、2002年録音の"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 119.)は盟友GEORGE MRAZとLEWIS NASHのサポートを得て、ガッツ溢れる若々しいプレイを披露していた。

このアルバムは1999年イタリア、カリアリ(CAGLIARI)の"17th SARDINIA INTERNATIONAL JAZZ FESTIVAL"におけるライヴ録音盤である。演奏曲目は言わずと知れたスタンダード・ナンバーのオンパレードだ。リズム陣は多分イタリアのプレイヤーだろう。FRIEDMANは1995年から1997年にかけてイタリア人のサイドメンを擁したアルバム(JAZZ批評 55.80.)を残している。イタリアとは縁が深い。
さて、今回の演奏はどうか?ウ〜ン、??という感じか。僕はこのリズム陣に「?」をつける。ベースは音程が怪しい上に、技量以上のことを演ろうとしてし失敗している。ドラムスも一本調子で退屈だ。このリズム陣はFRIEDMANの良さを引き出すほどの働きはしていない。というよりも足を引っ張ている。
               
@"IN YOUR OWN SWEET WAY" 
A"THE SHADOW OF YOUR SMILE" ありきたりのボサノバに終始。
B"SOLAR" 
C"STELLA BY STARLIGHT" ピアノがソロをとっている間は躍動感もあり、GOOD!でもベース・ソロがねえ・・・。
D"MY FOOLISH HEART" 折角の名曲が・・・。
E"CONFIRMATION"
 

最初の印象はこれほど悪くはなかった。ライヴならではの楽しさや躍動感を感じていた。しかし、じっくり聴き込めば聴きこむほどに、その粗さが目(耳)に付くのだ。それとアルバム・トータルでの印象も軽く深みに欠ける。トリオとしての一体感も希薄だ。雑な印象は否めない。
多分、そこに居合わせた聴衆は気が付かないで聴き過ごしたかもしれない。これはライヴというその一瞬を切り取った音楽にも拘わらず、繰り返し何回も聴けてしまう不幸と言っても良いかも知れない。CDという録音再生機によって陥る罠といっても良いだろう。もっとも、何回も繰り返し聴いていも素晴らしいというライヴ盤は山ほどあるが・・・。   (2004.03.13)



DON FRIEDMAN

独断的JAZZ批評 183.