シンプルに演奏した曲は間違いなく良いし、
随所、随所にきらりと光る演奏は一級品だ
惜しむなくはアレンジのし過ぎなのだ
"LOVER MAN"
JACKY TERRASSON(p), UGONNA OKEGWO(b), LEON PARKER(ds)
1993年スタジオ録音(VENUS JAZZ TKCV-79033)


わが町に来た中古CD・レコードのウィークリー・ショップで購入した1枚。JAZZのCDはダンボールで2箱分しかなかったが、これは「みっけもん」だ。確か1280円(新品)だったと記憶している。
このJACKY TERRASSONというピアニストはなかなかのピアニストだと思っている。今までにも、JAZZ批評の107.120.131.でも紹介している。
テクニックはあるし、才能も豊か。次世代を担うピアニストだと思っている。欠点といえば、アレンジに懲り過ぎること。才能もテクニックもあるのだからもっとストレートに演奏すれば良いと思う。アレンジに懲りすぎて、本来の演奏が活きてこないのが残念・・・といつも思っている。

今まで紹介した中では一番古い1993年の録音。録音もスタジオ録音でLEON PARKERがでしゃばり過ぎず、反対に、ベースは表に出ていてバランスが良い。

@"DONNA LEE" イントロから凝っている。4ビートのアドリブに入ってからが良い。LEONのシンバリングはここでも軽快にスウィングしているし、ドラム・ソロにも迫力がある。
A"NARDIS" この曲もテーマに続くアドリブが素敵だ。TERRASSONの切れ味の良い演奏が聴ける。これだけのイマジネーション豊かなピアノを弾ける人はそうはいないと思う。
B"FIRST CHILD" 短めのオリジナルのバラード。
C"IN YOUR OWN SWEET WAY" ここでもアレンジに凝って、間奏が挿入される。アレンジに懲りすぎると折角のドライブ感が途切れてしまうんだなあ。ああ、もったいない。

D"WAIL" いきなりのアップ・テンポ。実に小気味良くスウィング。と、思ったら、すぐ終わってしまった。2分とちょっと。
E"LOST" ベース・パターンの上をしっとりとピアノが歌う。印象に残るTERRASSONオリジナルの佳曲。
F"BROADWAY" ミディアム・ファーストの軽快な演奏。こういう演奏をいつも聴けたら、これは、もう最高!アレンジに凝らなくても、こんなにご機嫌な演奏になるのに・・・・。珍しくOKEGWOの長めのソロが聴ける。
G"LOVER MAN" これももっとシンプルに演奏した方が良かった.。本当に懲りすぎ。

H"CLOSE ENOUGH FOR LOVE" TERRASSONはスローなバラードにあって歯切れの良さを失わないピアニストだ。だから、スローな曲でもベターッとしたまとわりつくような嫌らしさがない。
I"LOVE FOR SALE" これもピアノとベースのパターン化したユニゾンで始まる。聞き古されたスタンダード・ナンバーに何とか斬新さを持ち込もうとしているのだろうけど、これはどうかな。やはりアドリブに入ってからの4ビートでスウィングするピアノが最高だ。低音部のアタックの強い左手、高音部の軽やかな右手はPARKERのたたき出す4ビートに乗ってご機嫌なスウィング感を生み出している。

シンプルに演奏した曲は間違いなく良いし、随所、随所にきらりと光る演奏は一級品だ。イマジネーションの豊かさ、確かな技量、ピアニストとしての才能に満ち溢れていると誰もが認めるだろう。惜しむなくはアレンジのし過ぎなのだ。その必要がないのに、あれもこれもの仕掛けがかえって邪魔だ。
シンプルさへの次の期待を込めて、ここは辛口に星4つ半。   (2003.07.06)



JACKY TERRASSON

独断的JAZZ批評 139.