音の粒立ちがはっきりしていて小気味良いし、
「上手いなあ!」と感心させるテクニックを持ち合わせている
更に、女性離れしたアーシーなフィーリングも併せ持っている
"WOW"
大西 順子(p), 嶋 友行(b), 原 大力(ds)
1992年スタジオ録音(SOMETHIN'ELSE 5547)

はっきり言うが、これは凄い!まさに「男勝り」だ。AKIKO GRACEを初めて聴いた時の感動がよみがえってくる。

正直に言って、日本のジャズに対する不満足感みたいなものをずっと持っていた。小曽根真や椎名豊、更には石井彰のピアノ・トリオをCDやライブで聴いてもそれほど感動したこともないし、まだまだ日本のジャズはアメリカに遠く及ばないと思っていた。
それを覆したのが、JAZZ批評 101.のAKIKO GRACE"MANHATTAN STORY"だ。たまたま聴いたHMVの試聴で釘付けとなった。これを機に、馬場和子、山中千尋と聴いたが、どれも素晴らしい演奏を披露してくれた。
となれば、次は大西順子をおいていないとなったわけ。

@"THE JUNGULAR" 大西のオリジナル。女性の弾くピアノとは思えないアーシーなフィーリングと強いピアノタッチ。
A"ROCKIN' IN RHYTHM" ELLINGTONの曲。
B"B-RUSH" 大西のオリジナル。4ビートを刻むベース・ラインの上を独特のフィーリングを持ったメロディが流れる。地味ながらサイドメンに徹したベースとドラムスに好感が持てる。
C"PROSPECT PARK WEST" RAY BRYANTを思わせる小作品。

D"POINT-COUNTER-POINT" アップ・テンポの軽快なシンバリングとウォーキング・ベース。躍動感と大西のスマートでモーダルな演奏がGOOD!
E"BRILLIANT CORNERS" T.MONKの代表作。ウーッ、臭いテーマに臭い演奏!これならMONKも文句が言えない?
F"NATURE BOY" このCDのハイライト。これは泣かせます。テーマはドラムスとのデュオで始まるが、このマレットによるドラミングが渋い!続いて、太いベースのウォーキングの上を奏でる右手のハイトーン・ピアノが最高。ゾクゾクする。更に、ブロック・コードで駄目を押す。この1曲を聴くだけでも購入の価値あり。
G"BROADWAY BLUES" ORNETTE COLEMANのブルース。面白いテーマ、強烈なスィング感と個性的なフィーリングが楽しめる。

大西順子のピアノは音の粒立ちがはっきりしていて小気味良いし、重低音の使い方を含めて「上手いなあ!」と感心させるテクニックを持ち合わせている。その上に女性離れしたアーシーなフィーリングを持っているから、「女性が弾いている」と断りを入れないと分からないのではないか。
ベースとドラムスは控えめながら堅実なサポートを展開している。大西とのコンビネーションも良い。どちらかというと大西順子のワンマン・ピアノ・トリオという印象だ。

期待に違わずガッツとドライブ感満載の演奏が楽しめる。特にFはこのアルバムのハイライト。次いで、Dもお奨めだ。敢えて、一言付け加えると「もう少し色香が欲しい・・・」  (2003.01.06)


JUNKO ONISHI

独断的JAZZ批評 116.