独断的JAZZ批評 952.

KENNY WERNER
CDという音楽媒体は演奏の質と同時に音の質をも同時に求められるものなのだ
"THE MELODY"
KENNY WERNER(p), JOHANNES WEIDENMUELLER(b), ARI HOENIG(ds)
2014年9月 スタジオ録音 (PIROUET : PIT3083)


KENNY WERNERのアルバムの中では2008年録音の"A TIME FOR LOVE"(JAZZ批評 509.)が素晴らしかった。JENS SONDERGAARDを迎えたデュオ・アルバムでSONDERGAARDはアルトサックスのほかにバリトンサックス、クラリネットを使い分けていた。聞古されたバラード集であったがなかなかの優れものであった。機会がある方は是非!
翻って、本アルバムでは異色のドラマー・ARI HOENIGが参加しているのが興味深いところだ。

@"TRY TO REMEMBER" リリカルなピアノのソロで始まる。メルヘンチックでもある。HOENIGの素晴らしいブラシ・ワークが堪能できる。
A"WHO?" 
ベースの定型パターンが続く、どちらかというと無機質な印象を与える演奏だ。HOENIGのドラミングは目立つが、WEIDENMULLERのベース音が控え目。これは、ひとえに録音バランスが悪いと言わざるを得ない。
B"BALLOONS" WEIDENMULLERのベース・ソロが入るが音圧レベルが低くてチマチマと聴こえてしまうのは気の毒としか言いようがない。
C"26-2" 
J. COLTRANEの曲だという。剽軽な曲でテーマを楽しむというよりはテーマはあくまでも素材でアドリブでどこまで楽しめるかというスタイルだ。後半部にHOENIGのドラム・ソロが入るが、生き生きとしたドラミングがいいね。
D"VONCIFY THE EMULYANS" 
WERNERのオリジナル。色々な要素が入り込んでいて摩訶不思議な音楽だ。
E"IN YOUR OWN SWEEY WAY" 
言わずと知れた、D. BRUBECKの代表作。既に、スタンダード化されている曲だ。テーマに入る前に長いインタープレイが入る。後半にかけて心地よい4ビートを刻んで進む。この時、ベースのWEIDENMULLERのベース音がオフ気味で、常にHOENIGのドラムに力負けしているのが残念。最後にピアノの高音部とベース、ドラムスのインタープレイが入って終わる。
F"BEAUTY SECRETS"
 WERNERのバラード。徐々にイン・テンポになってきて昂揚感が増してくる。ここではHOENIGのドラミングもピタリと嵌っていて躍動感を演出している。返す返すもWEIDENMULLERのベース音がオフ気味で3者の丁々発止のインタープレイにまで昇華できてないのが残念だ。

ピアノ・トリオは3者の力量が拮抗していて丁々発止のインタープレイがないとその醍醐味が伝わってこない。このアルバムに限って言えば、ベースが弱い。単に力量的なものだけでなく、それに追い打ちをかけるように録音バランスが悪いのだ。ベースのWEIDENMULLERはこれで大いに損している。気の毒だと思うほどだ。これで録音が良ければ結構楽しめるアルバムになっていたことは間違いないだろう。
やはり、CDという音楽媒体は演奏の質と同時に音の質をも同時に求められるものなのだ。   (2015.08.15)

試聴サイト:https://www.pirouet.com/home/album.php?release=PIT3083



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