独断的JAZZ批評 944.

YASUMASA KUMAGAI
間髪を入れず、「ヤス〜竜〜耕造」の同世代コンビでニュー・アルバムをリリースしてほしいところだ
"J-STRAIGHT AHEAD"
熊谷ヤスマサ(p), 井上陽介(b), 大坂昌彦(ds)
2014年9月 スタジオ録音 (JAZ・ZY BEAR : JZBR-0001)


熊谷ヤスマサの5年ぶりの新譜だという。このCDも3000円超と少々高目だが、熊谷のアルバムなのでパスするわけにはいかない。
2009年にリリースされた"OL'SCHOOL JAZZ"(JAZZ批評 646.)は川村竜とのデュオ。日本にもこんなに凄いヘヴィーサウンズがあったのかとビックリしたものだ。更に2010年にはドラムスに小森耕造を加えた"PRAY"(JAZZ批評 640.)で、新世代ピアニストとしての地位を築きあげたと言っても良いだろう。いずれも素晴らしいアルバムで、勿論、星5つ。機会があれば是非!
翻って、本アルバムには日本のジャズシーンを代表するベテランの井上陽介(b)と大坂昌彦(ds)が参加している。現在、36歳の熊谷に対して、井上が50歳、大坂が48歳だ。

@"DRAFT BEER" ピアノにドラムスとベースが絡み、いきなりハード・タッチのプレイが始まる。続いて、唸りをあげる4ビートが展開される。なかなかいいね。井上のベース・ソロがフィーチャーされるが、速弾き多用なので驚いた。
A"MOONLIGHT" 
ここでもベース・ソロがフィーチャーされるがなんかチマチマした速弾き多用で興が醒める。大坂のドラミングもフィーチャされるが、熊谷のピアノにいつもの伸びやかさが足りないように感じる。
B"ETERNITY" 
またもベース・ソロがフィーチャされるが、先輩を前に気の使い過ぎ?速弾きのオンパレードで白ける。何よりも熊谷のノリが良くないね。
C"CHILL OUT" 
Gを除く、全ての曲が熊谷のオリジナルだけど、どれも似たよな感じに聴こえてしまうのが残念だ。手数の多い大坂のドラミングもトリオのアンサンブルという点でもうひとつだ。ここでも、井上のベース・ソロが・・・。
D"SUNSET" 
8ビートの演奏で、これは熊谷らしさが出ていていいね。ついでに言うと、ベース・ソロがないのも良かった。
E"THANK YOU LORD WORD UP !" 
ここでもベース・ソロが・・・。
F"SUMMER VACATION" 
アップ・テンポの4ビートで突き進む。ドライヴ感があっていいね。アルバム全体を通して、このトラックみたいにもっとシンプルにプレイできれば良かったかもしれない。
G"PERFIDIA"
 本アルバムの中で、全く似つかわしくない曲がこの曲。メキシコのALBERTO DOMINGUESが書いた曲で、NAT KING COLEをはじめ多くの歌手が愛唱した曲だ。

15歳近く歳の離れた先輩たちに気を遣ったのかは分からないが、兎に角、二人にソロの機会を多く与えている。その分、熊谷らしさが影を薄めて、あの伸びやかで遊び心のあるプレイが見られないのが残念。
皮肉なことに、本アルバムは川村竜という若きベーシストの逸材ぶりを再認識させるアルバムとなってしまった。小森を加えたトリオ・アルバム"PRAY"にはアンサンブルの良さ、緊密感と伸びやかで遊び心のある演奏が凝縮している。間髪を入れず、「ヤス〜竜〜耕造」の同世代コンビでニュー・アルバムをリリースしてほしいところだ。   (2015.06.28)

試聴サイト:http://j-jazzmaster.blogspot.jp/
参考サイト:
https://www.youtube.com/watch?v=bUTWPk2MtgE&feature=player_embedded#!



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