独断的JAZZ批評 925.

JOEY CALDERAZZO
嬉しい誤算!
"GOING HOME"
JOEY CALDERAZZO(p), ORLAND LE FLEMING(b), ADAM CRUZ(ds), BRANFORD MARSALIS(ts on A)
2014年8月 スタジオ録音 (SUNNYSIDE : SSC 1409)

JOEY CALDERAZZOのピアノ・トリオ盤としては1999年録音の"JOEY CALDERAZZO"が有名だが、生憎、僕はこのアルバムを入手していない。(中古盤が見つかったので現在、アメリカから取り寄せ中。後日、紹介したい)
かつて、2013年のライヴ録音盤"LIVE"(JAZZ批評 809.)を紹介しているが、評価としては今一つだったので、本アルバムには過度の期待は寄せていなかった。
本アルバムに友情出演の形で1曲に参加しているBRANFORD MARSALISのカルテットに、CALDERAZZOがレギュラー・ピアニストとして参加したのはKENNY KIRKLANDが亡くなった後だった。それが1999年のことだ。それから15年、50歳となった年齢を考えても熟れごろかも知れない。
スタンダードが
CFの2曲で、残りの7曲がCALDERAZZOのオリジナル。

@"MANIFOLD" フリーなインタープレイで始まるが、徐々にイン・テンポにシフト。やがて4ビートを刻む。CRUZも適度に暴れていていいね。
A"I NEVER KNEW" 
BRANFORD MARSALISがこの曲のみ参加。朗々と吹き上げるテナーと熱いアンサンブル。
B"WHY ME" 
CRUZのブラシ・ワークが面白い。
C"STARS FELL ON ALABAMA" 邦題、「アラバマに星落ちて」 CALDERAZZOのピアノはこういうコード進行の曲ではセンスがとても良い。かすかに聴こえるCALDERAZZOの口ずさみもアクセントになっている。目を瞑って星空を連想しながら聴いてほしい。少しくぐもったFLEMINGのベースが妙にしっくりと合う。何回も繰り返し聴きたくなる。
D"LEGEND" 
CRUZの迫力あるマレットで始まる。抽象画風のインタープレイからイン・テンポへシフトしていく。本アルバム最長の10分。
E"ONE WAY" 
元気の良いドラミングに合わせて剽軽なテーマを奏でる。後に、ミディアム・テンポの4ビートを刻む。
F"MY FOOLISH HEART" VICTOR YOUNGが書いたバラード。BILL EVANSの"WALTZ FOR DEBBY"(JAZZ批評 17.)にも収録されている超有名曲だ。結構やり難いとは思うけど、独自色を出していて良いね。
G"MIKE'S SONG" 
ガラッとプレイスタイルを変えて、熱く迫ってくる。音符多目でテンションも高目。こういう演奏も入っていないとバランスが悪いというものだ。モード奏法というよりはワン・コードという雰囲気なのだけど、どうだろう?
H"GOING HOME"
 最後を締めるピアノ・ソロ。いい曲だなあ!ノスタルジックで牧歌的な雰囲気を感じさせるバラード。まさに"GOING HOME" 沁みる!

歌心溢れるリリカルなピアノ・ソロがあるかと思えば、テナーが参加したトラックもある。ハイテンションでノリノリの演奏もあれば、抽象画風のイントロもある。あれやこれやと忙しいが、どのトラックも十二分に楽しませてくれるに違いない。
ベースの音色がくぐもっていてオフ気味なのが気にかかるが、それ以外は素晴らしい。試聴も十分には出来なかったので多くの期待をしていなかったのだが、流れ出てくる音楽は期待を上回るものだった。嬉しい誤算ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2015.03.18)

試聴サイト:
https://soundcloud.com/fullyaltered/going-home
      
https://soundcloud.com/fullyaltered/why-me
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