独断的JAZZ批評 915.

AARON GOLDBERG
ブラジル色が豊かだというのも意外や意外
"THE NOW"
AARON GOLDBERG(p), REUBEN ROGERS(b), ERIC HARLAND(ds), KURT ROSENWINKEL(g on
I)
2014年4月, 2009年1月(
C, E, H) スタジオ録音 (SUNNYSIDE : SSC1402)

AARON GOLDBERGのリーダー・アルバムは2007年作の"HOME"(JAZZ批評 623.)以来、7年振りのリリースである。メンバーもトリオの9曲は前回と一緒。
REUBEN ROGERSは今や引く手あまたの黒人ベーシスト。ROGERSのベースは知的なベースラインと良く歌っているのがいいね。2011年のベスト・アルバムの1枚として選んだERIC REEDの"SOMETHING BEAUTIFUL"(JAZZ批評 725.)や、同じく、2013年のベスト・アルバムに選んだLUIGI MARTINALE"STRANGE DAYS"(JAZZ批評 812.)にも参加しており、その実力のほどは証明済みだ。

@"TROCANDO EM MIUDOS" すこし哀愁を帯びたラテンタッチの曲で、良い曲だ。ここでは、熱くならずに、淡々と弾いている。歌手で音楽家で詩人、さらに作家でもあるブラジルのCHICO BUARQUIの作曲だ。 
A"YOYO" 
ハイチのトラッド・ソングだという。ピアノの弦を手で押さえながらリズムを刻む。口ずさみやすい軽快なメロディ・ラインもいいね。
B"THE WIND IN THE NIGHT" GOLDBERGのオリジナル
夜に忍び込む柔らかな風のよう。何の変哲もなく穏やかに終わってしまう。
C"E-LAND" これもGOLDBERGのオリジナル。このタイトルはドラマーのERIC HARLANDを指しているのだろうか?3分弱の短い演奏の中でHARLANDのドラムスが勇躍する。
D"PERHAPS" 
C. PARKERが書いたブルース。4ビートを刻みだすとROGERSのベースが唸りをあげるが、トリオとしての躍動感がもうひとつ。
E"TRISTE BAIA DA GUANABARA" これもラテン系 or ブラジル系?の楽曲だろうか?美しくも味わい深い曲だ。しっとりと歌い上げた。
F"BACKGROUND MUSIC" 
超高速のパッセージの連続で、味もそっけもない。速く弾けばいいってもんじゃない。テクニシャンが陥りやすい罠だね。
G"FRANCISCA" 
ブラジルのギターリスト・TONINHO HORTAの曲。美しいブラジルの音楽が3曲も入っているのが意外といえば意外だ。
H"ONE'S A CROWD" GOLDBERGのオリジナル。
I"ONE LIFE" この曲のみ、ギターのKURT ROSENWINKELが参加している。録音年月は2014年4月とあるが、録音スタジオが違う。あえて、この1曲を追加した意味が分からない。他の9曲とは異質な演奏で、はっきり言って何も面白くない。初めからない方が良かった。ROSENWINKELの作り出す音色はギターというよりは「笛」のような音色だ。

GOLDBERGのアルバムでブラジル色が豊かだというのも意外や意外。
選曲の@、E、Gの3曲がいずれも良い曲で、やはり「いいテーマにいいアドリブあり」が実現している。逆に言えば、この3曲ばかりが強く印象に残ってしまって、他のトラックの印象が薄くなってしまたのが残念。
それと、サイドメンの二人が少々遠慮気味なのも気に入らない。もっと熱いインタープレイを期待していたのだが・・・。   (2015.01.14)

試聴サイト:
https://www.youtube.com/watch?v=uEbzt_Hv2JM
        https://www.youtube.com/watch?v=FM1-p1bKZIU 



.