「好き」と「嫌い」のプレイヤーが一緒に演奏すると
どういう評価になるのか興味があった。
"THE ART OF THREE"
KENNY BARRON(p), RON CARTER(b), BILLY COBHAM(ds) 
2001年ライヴ録音(IOR 77045-2)

初めにお断りしておくと、このCDに参加している RON CARTER のベースが僕は嫌いだ。何年も前だがBLUE NOTE TOKYO のライヴに行った時に酷くがっかりさせられた記憶がある。少なくとも僕には「やる気がない、手抜き」としか聞こえない演奏だった。「もっと真面目にやれ!」という想いが強く残った。元々、この人のベースはあまり好きでないところに、この演奏だったから二重に嫌いになった!?聴衆は結構、執念深いものなのだ。
音も良くない。ビート感のないボワーッとした音だ。
これだけ嫌いなのに、何故このCDを買ったか。それは、好きな KENNY BARRON がピアノを弾いているから。
「好き」と「嫌い」が一緒に演奏するとどういう評価になるのか興味があった。そして、その結果は?やっぱり、算数と同じだった。足して、2で割って、月並みな演奏になった。

お目当ての BARRON もいつものトリオ演奏と趣が違う。輝きがない。もっとリラックスしたご機嫌な演奏を聴きたかったが、少し硬い。ネーム・バリューだけの RON との相性は決して良くない。肌が合わないという感じ。

曲目には "STELLA BY STARLIGHT" "AUTUMN LEAVES" BOUNCING WITH BUD" "'ROUND MIDNIGHT" "I THOUGHT ABOUT YOU" "SOMEDAY MY PRINCE WILL COME" といったお馴染みの曲がこれでもかのオンパレード。
概してスタンダード・ナンバーと歌モノの多いアルバムというのは深みに欠ける。プレイヤーの本当にやりたいことを「やれない」場合が多いからだと思う。オリジナル曲があってこそのジャズだと思うのだが、どうだろう。

今回のこのアルバムの場合も顔見世興行的な色彩が非常に強い。事実、サブタイトルに "featuring RON CARTER / KENNY BARRON" と書いてある。オリジナル・グループならこうは書かない。

忘れていたが、リーダーはドラムスの BILLY COBHAM 。「ご苦労さん」と言いたい。
(2002.05.15)


BILLY COBHAM

独断的JAZZ批評 68.